「普通の会社になりたい」

 この値上げについて、コンクリート圧送会社の全国団体、全国コンクリート圧送事業団体連合会(全圧連)の佐藤勝彦会長はこう話す。

 「料金改定の幅は各企業が判断することだが、これは必要最低限の構造改善を進めるためのプロセスだと理解してほしい。ここ数年、圧送会社の廃業や作業員の引退が相次いだうえ、若い職人の入職はほとんどなく業界は壊滅寸前だった。この機会に何とか普通の会社になりたい」

全圧連が示している原価計算の実例。10トンのポンプ車を例にとっている(資料:「コンクリート圧送工事業経営ハンドブック」をもとに本誌が作成、写真:日経アーキテクチュア)
全圧連が示している原価計算の実例。10トンのポンプ車を例にとっている(資料:「コンクリート圧送工事業経営ハンドブック」をもとに本誌が作成、写真:日経アーキテクチュア)

 全圧連は、経営ハンドブックを作成し、会社の経営規模やポンプ車の重量などに応じた原価計算シミュレーションを、傘下の会員に参考情報として提供している。その一例が、上のシミュレーションだ。作業員の年間給与を450万円とし、社会保険料などの法定福利費も積み上げて試算している。記事冒頭の要望書は、ほぼこれに沿った内容だ。

 佐藤会長によれば、傘下の職人の平均年収は300万円台。社会保険には未加入で、退職金制度を整備していない会社も多い。安全面でも多くの問題を抱えたままだ。ポンプ車の法定耐用年数は6年なのに15年以上使う会社が多く、老朽化によるブームの破損事故も後を絶たない。

 「賃金も労働環境もこれまでがひどすぎた。必要最低限の水準を維持することで、若い職人の定着率アップにつなげたい」(佐藤会長)