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職人不足の深刻化によって建設コストが上昇し、建設工事が前に進まない事態が続出している。日経アーキテクチュアと日経コンストラクションが6月24日に発行した書籍「人材危機―建設業から沈む日本」から、小売業などの出店計画に与える影響をリポートする。

 職人不足の影響が、日本経済全体に影を落とし始めた。建物投資を足掛かりにビジネスを展開する企業などが、事業計画を見直す必要に迫られている。ひずみが生じているビジネスの現場を追った。

 建設費高騰の影響は、小売業にも及び始めている。「去年下期に予定していた新店舗が1年遅れて、今年ようやくオープンできることになった。最近では役員会で、店舗を建設する工期の遅れの話が頻繁に出る」――。しまむらの野中正人代表取締役社長は、新店舗の出店計画における昨今の悩みをこう語った。

しまむらグループ全体で、2014年2月時点の店舗数は当初の計画を18店下回った。2015年2月期(14年3月~15年2月)は、15年2月時点で1933店舗を目指す目標を掲げた(資料:しまむらの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)
しまむらグループ全体で、2014年2月時点の店舗数は当初の計画を18店下回った。2015年2月期(14年3月~15年2月)は、15年2月時点で1933店舗を目指す目標を掲げた(資料:しまむらの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成)

 しまむらは衣料品などを扱う流通企業だ。グループの店舗数は約1800店。毎年約70店舗の新規出店を計画し、事業を伸ばしてきた。その事業計画が狂った。14年2月期(13年3月~14年2月)の計画では、グループ全体で新規店舗を約70店舗増やす予定だったが、実績は約50店舗増にとどまった。

 野中社長は「出店計画に無理があった。工期の遅れなどが要因で出店を見合わせたのは7店舗程度。直近の収益に大きな影響はない」と説明した。15年2月期(14年3月~15年2月)は工期遅れも想定した対策を取る方針だ。