「事業費が3億円膨らんだ」

 北海道新幹線は函館駅を通らず、北斗市内に設置する新駅「新函館北斗駅」を通るが、函館市は新幹線開業を街づくりの好機と捉え、函館駅前の再開発に着手していた。事業主は12年にプロポーザル方式で選ばれた洋菓子メーカーのペシェ・ミニョン(函館市)。事業費は11億5400万円を予定していた。

プロポーザルで選ばれたペシェ・ミニョンの提案。見学できる菓子工場などを計画していたが、事業費が膨らみ事業中止が決まった(資料:函館市)
プロポーザルで選ばれたペシェ・ミニョンの提案。見学できる菓子工場などを計画していたが、事業費が膨らみ事業中止が決まった(資料:函館市)

 しかし、昨今の労務費高騰などで事業費が3億円ほど膨らむことが判明。同社は函館市に規模縮小を提案した。JR北海道を含め3者で協議した結果、中止することが決まった。函館市の担当者は今後について「建築や街づくりの専門家の意見を聞いて検討する。新幹線開業に間に合うかどうかは不明だ」とした。

新幹線新駅に隣接するホテルも中止

 函館駅周辺では、JR北海道が5月21日にホテル建設の凍結を発表したばかりだ。同ホテルは、函館駅北口に隣接する敷地に計画していた。同社の子会社である北海道JRインマネジメントが運営する「JRイン」として整備する予定だった。

 当初は250室を想定していたが、建設費の高騰で100室に計画を縮小。それでも採算が合わず、事業凍結を決定した。同社の広報担当者は、「建設費などの状況が変われば敷地の活用策を検討するが、現在、具体的なものはない」と述べている。

 同社は、北海道新幹線の新函館北斗駅前で計画していたホテルも、同様の理由で建設を断念。新幹線開業を2年後に控え、駅前再開発に暗雲が立ち込めている。