住宅をめぐるクレームはささいなすれ違いから生じることが多い。建て主の本音を理解していれば、悲劇が生じるのを防げたはずだ。日経ホームビルダーは50のクレーム事例を紹介した書籍「クレームに学ぶ建て主の本音」を発刊。同書では、長年、大手住宅会社でCS(顧客満足)業務に携わり、これまでに1500件以上の住宅クレームに対応してきた青山CSプランニング(大阪市)代表の青山秀雄さんに、クレーム事例から建て主の本音を読み解くヒントを聞いた。その要点をお伝えする。(日経ホームビルダー)
青山CSプランニング 代表
クレームは言うほうも受けるほうも嫌なものだ。クレームがないに越したことはないが、住宅建築は人がやる仕事なのでだれかがミスすることはある。ミスがあっても正しい対応を取れば、クレームとはならずに単なるミスで済む。クレームになるのは、対応に問題があるからだ。
「クレームは宝の山だ」とよく言われるが、クレームそのものは決して宝ではなく、無いほうが良い。クレームを生かして再発防止につなげられれば宝になるのだ。何も教訓を得ずにその後の対応に生かされなければ、意味がない。
小さい不満の積み重ねがクレームに
書籍「クレームに学ぶ建て主の本音」に登場するクレームには住宅リフォームの事例が多い。住宅産業は「クレーム産業」とよく言われるが、そのなかでも突出してクレームが多いのはリフォームだ。顧客の家の中に入って、顧客の目の前で作業するので、顧客も相当の苦痛を受けることになる。
例えば、大工が木材を切れば当然、おがくずが生じる。顧客は、おがくずが室内に散乱すると自分で掃除しなければならないと不満に感じる。ピアノや電子機器などがあれば、おがくずで故障しないかと心配する。また、くぎが1本落ちていれば、床に傷が付かないかと不安になる。顧客は絶えずそうした不満や不安を抱いた目でリフォーム工事を見ている。
小さい不満や不安の積み重ねが、何かのきっかけでクレームに変わる。職人の話し方や歩き方、養生の仕方など最初は小さい不満にすぎない。そうしたいろいろな不満の要素を抱えてリフォーム作業が行われていることを意識する必要がある。