工事費は「1625億円」を上回る可能性も

 公表された基本設計の結果によると、まず、天然芝の生育のため、競技場の南側を覆う固定屋根部分に日射の透過率が70%ほどの透明材を採用する。加えて、日射量や通風の不足を補うために、グローイングライト(芝生促成用の照明)や大型送風機を使うほか、ピッチ内部に温冷水による地中温度制御システムや土壌空気交換システムを設ける。

屋根素材の配置。天然芝の生育のため、南側の固定屋根部分に日射の透過率が70%ほどの透明材を採用する(資料:日本スポーツ振興センター)
屋根素材の配置。天然芝の生育のため、南側の固定屋根部分に日射の透過率が70%ほどの透明材を採用する(資料:日本スポーツ振興センター)

 芝は冬季に寒地に適した芝、夏季に暖地に適した芝と、年2回の張り替えを計画する。ただし、コンサートなどのイベント開催時の芝生の保護については、「養生マットを芝生上に敷設する」とだけ示しており、今後の実施設計などで詳細な検討が必要となる可能性がある。

 次に、開閉式の屋根部分は、折り畳み式の膜構造としたうえ、屋根ではなく「開閉式の遮音装置」と法的に位置付けた。既に特定行政庁の了解も得られているという。こうすることで、天井材に求められる不燃や準不燃といった内装制限などが緩和される可能性がある。開閉部分の膜材はポリ塩化ビニル(PVC)製のC種膜とする。

開閉式の屋根部分。折り畳み式の膜構造としたうえ、屋根ではなく「遮音装置」と法的に位置付けた。膜材はポリ塩化ビニル(PVC)製のC種膜とする(資料:日本スポーツ振興センター)
開閉式の屋根部分。折り畳み式の膜構造としたうえ、屋根ではなく「遮音装置」と法的に位置付けた。膜材はポリ塩化ビニル(PVC)製のC種膜とする(資料:日本スポーツ振興センター)

 建物の規模について、基本設計では新国立競技場の最高高さを約70mで計画した。神宮外苑の地区計画で定められている高さの限度よりも5m下げた。隣接する東京体育館や聖徳記念絵画館などの高さに配慮して、軒高も抑えた。

最高高さを約70mで計画。2013年11月のフレームワーク設計時より約5m下げた(資料:日本スポーツ振興センター)
最高高さを約70mで計画。2013年11月のフレームワーク設計時より約5m下げた(資料:日本スポーツ振興センター)

 コストについては、概算工事費として1625億円とはじいた。内訳は本体整備が約1388億円、周辺整備が約237億円。13年7月時点の単価による概算で、消費税5%を含む金額だという。日本スポーツ振興センターが昨年11月に公表した試算よりも合計で160億円ほど抑えたものの、昨今の作業員不足による労務費の上昇や、敷地外の関連工事費などを合わせると、実際に要する工事費は概算よりも膨らむ恐れがある。