記録的な超高層ビルと不況の関係

 「記録的な超高層ビルと不況の関係」を調べる研究がある。そのパイオニアになった経済アナリストのアンドリュー・ローレンス氏は、1999年、「高さ記録を更新しようとしている超高層ビルの建設中、もしくは完成した後に、経済が不況に陥る傾向がある」事実に気がついた。

 この研究は、当初、「超高層ビル指標」(Skyscraper Index=スカイスクレーパー・インデックス)というキーワードを付けて発表された。しかし、「超高層ビル指標」では何のことか分かりにくい。

 そこで、ジャーナリストのデビン・レオナルド氏が、「超高層ビルは不況を招く傾向がある」という結論に着目。2005年、雑誌FORTUNEに掲載した記事で、「超高層ビルの呪い」(Skyscraper Curse=スカイスクレーパー・カース)というキーワードを初めて使用し、以降、この言葉が浸透していった。ただし、「呪い」では少し仰々しいので、「超高層ビルのジンクス」の方が適切な気もする。

 これまでに、次のような「超高層ビルのジンクス」が確認されている。

    【ニューヨークのシンガー・ビルディング】
  • 47階、高さ187m、完成当時は高さ世界一。
  • 着工1906年、完成1908年(1968年に解体)。
  • 建設中の1907年10月に、ニューヨーク証券取引所の株価が暴落し、金融恐慌が発生した。

    【ニューヨークのエンパイアステートビル】
  • 102階、高さ381m、完成当時は高さ世界一。
  • 着工1929年、完成1931年。
  • 建設中の1929年10月24日にニューヨーク証券取引所で株価が大暴落。各国の経済に波及し世界大恐慌をもたらした。

    【ニューヨークのワールド・トレード・センター(WTC)】
  • 110階、高さ417m、完成当時は高さ世界一。
  • 着工1966年、完成1973年(2001年にテロで崩壊)。
  • 1973年4月にWTCの落成式が行われた。しかし、同年10月に第1次オイルショック(石油危機)が発生。世界同時不況をもたらした。

    【マレーシア・クアラルンプールのペトロナスタワー】
  • 88階、高さ452m、完成当時は尖塔を含めた高さで世界一。
  • 着工1992年、完成1998年。
  • 建設中の1997年7月に、タイを中心にアジア各国の通貨が急激に下落して、アジア通貨危機が発生。マレーシアも打撃を受けた。

    【ドバイのブルジュ・ハリファ】
  • 160階、高さ829m、高さ世界一。
  • 着工2004年、完成2010年。
  • 建設中の2009年11月に、ドバイ政府が政府系持株会社の債務返済繰り延べを要請したため、世界的に株式相場が急落した。これはドバイショックと呼ばれる。