世界最北の島国アイスランドが、地熱発電を柱とする自然エネルギー立国への挑戦を進めている。地震と火山の国という厳しい自然環境を生かして経済成長を目指す取り組みは、世界の注目を集めつつある。日本との共通点も多い同国の現状と展望について、欧州事情に詳しい国土交通省大臣官房秘書室の菅昌徹治氏に報告してもらった。(ケンプラッツ)

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 アイスランド(Iceland)は、ヨーロッパ大陸の北西、北極圏のすぐ南側に位置する島国だ。ヨーロッパ内での共同市場整備を目指す欧州経済領域(EEA)に属し、2009年にはEU(欧州連合)に対して加盟申請を行った。一方、ニューヨークからも空路で約5時間の距離にあり、地球儀を上から見ると、ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の中間にグリーンランドと並んで浮かんでいることがわかる。

 国名は「氷の国」(アイスランド語の綴りはIsland)を意味しているが、氷河で覆われているのは国土の約11%である。その気候も、海流の影響で夏は平均気温が10.6℃に達し、冬でもニューヨークと同程度の平均0℃であるなど、特に厳しいものではない。春から夏にかけての季節にこの国を訪れれば、透明感あふれる空気の中、高緯度のためいつまでも沈まない太陽の下で長い夜を楽しむことができる。

 アイスランドの全人口は約32万人であるが、国土の約8割は山岳地帯などの非居住地で、住民の半数は島の南西の端にある首都・レイキャビク(Reykjavik)とその近郊に住んでいる。しかし、レイキャビクの市街には人々が密集しているような様子はまったくなく、広々とした道路に沿って政府機関の小さな建物が散在し、港に近い住宅地にはカラフルな家々がゆったりと立ち並んでいる。

アイスランド首相府の小さな建物(写真:菅昌 徹治)
アイスランド首相府の小さな建物(写真:菅昌 徹治)
教会の塔から眺めるレイキャビク市街(写真:菅昌 徹治)
教会の塔から眺めるレイキャビク市街(写真:菅昌 徹治)

 市内のあちこちには緑地や公園があるなど、街全体が穏やかな雰囲気に包まれており、ヨーロッパの約80の都市を対象としたEUの調査でも、治安や居住環境の面で住民から高い評価を得ている。

 そして、この街の最大の特徴としては、95%の建物の暖房が地熱エネルギーによってまかなわれていることが挙げられる。実は、アイスランドでは一次エネルギー使用の約66%を地熱エネルギーが占めており、国内の90%以上の建物の暖房や、170カ所以上の公営温水プールなどに利用されているのである。