災害大国・アイスランドに学べ

 こうして、美しく、雄大な自然の恵みがあふれているアイスランドであるが、私たち人間にとって、自然は時に大きな脅威ともなる。この国は、火山噴火、地震、津波などの自然災害が多発する「災害大国」ともなっているのである。

 火山については、5年に1回程度の周期で大きな噴火が起こっており、1783~86年には農地が破壊されて大規模な飢饉が発生するなど、住民に甚大な被害を与えてきた。最近では、2010年4月にエイヤフィヤトラヨークトル(Eyjafjallajokull)火山が大噴火した際、ヨーロッパ上空を覆ったその火山灰の影響で10万便以上が欠航となるなど世界の航空網が大混乱に陥り、火山灰中を飛行するための新たな基準をEUが急きょ策定するという事態ともなった。

 また、アイスランドの北部及び南部は地震多発地帯でもある。小規模な地震はほぼ毎日のように発生し、2000年6月にはマグニチュード(Mw)6.5の規模の地震が島の南部を2度も襲っている。更に、こうした地震や、雪崩・巨石の沿岸への流入が原因となって津波が発生することもある。

 やはり火山の多い島国である日本も、歴史的に地震や津波などによる甚大な被害を受けてきたが、これらに対処するための技術も進歩してきた。近年ではASEAN諸国や中東諸国に対して、防災分野におけるインフラ整備などの協力・支援も行っている。今後、気候変動の影響などで引き起こされる想定外の規模の自然災害に備えるためには、日本と同様に長い年月にわたって災害と戦ってきたアイスランドとも知識や経験を共有してゆくことが期待される。

 日本人にとっては地の果てのようなイメージも強いアイスランドであるが、昨年(2013年)4月には中国がアイスランドとの間にFTA(自由貿易協定)を締結し、北極圏開発への影響力拡大を狙うなど、世界の注目が集まりつつある。わが国のエネルギー産業やインフラ関連産業にとっても、新たなフロンティアとなる可能性が高いのではないだろうか。

雪をかぶる内陸の山々と荒地(写真:菅昌 徹治)
雪をかぶる内陸の山々と荒地(写真:菅昌 徹治)

■参考文献
外務省ホームページ
アイスランド公式ホームページ
アイスランド観光局ホームページ
アイスランド南部観光局ホームページ
アイスランドエネルギー局ホームページ
アイスランド気象局ホームページ
レイキャビク観光局ホームページ
ブルーラグーンホームページ
シンクヴェトリル国立公園ホームページ
アメリカエネルギー情報局ホームページ
EU運輸総局ホームページ
Eurobarometer “Quality of Life in European Cities, Country Report Iceland” (Flash Eurobarometer 366, January 2014)
Simon BOWERS “Iceland seeks UK funding for subsea cable project” (The Guardian, October 27, 2013)
Damian CARRINGTON “Iceland’s volcanoes may power UK” (The Guardian, April 11, 2012)

菅昌 徹治(すがよし・てつじ)
国土交通省大臣官房秘書室。1976年横浜生まれ。99年国土交通省(旧建設省)入省。2009年4月から12年8月まで外務省EU日本政府代表部(在ブリュッセル)に一等書記官として勤務。