「地球の割れ目」が見える世界遺産

 膨大な地熱エネルギーをアイスランドにもたらした大自然は、他にも様々な驚異の景観を島内に繰り広げている。特に、ゴールデンサークルと呼ばれる島の南西部には、壮大な自然のモニュメントが集中している。

 ゴールデンサークルの中で最も重要なポイントは、レイキャビクから東に50kmほどの距離にあるシンクヴェトリル(Thingvellir)国立公園である。公園内では、ユーラシアプレートと北米プレートの境界線が地上に露出しており、断崖に囲まれた約7kmの幅を持つ地溝となっている。2つのプレートは、毎年約2cmのスピードで互いに逆方向への移動を続けており、このいわゆる「地球の割れ目」も拡大しているのである。

 なお、この一帯は、930年に世界で最も古い議会と言われるアルシンギ(Althing)が開催された場所として、世界遺産にも登録されている。高くそびえる崖の前で演説をすると、指導者の声が壁に反響して民衆に伝わりやすいため、この場所が選ばれたとも考えられている。

世界遺産・シンクヴェトリル国立公園(写真:菅昌 徹治)
世界遺産・シンクヴェトリル国立公園(写真:菅昌 徹治)
アルシンギが開催された断崖(写真:菅昌 徹治)
アルシンギが開催された断崖(写真:菅昌 徹治)

 シンクヴェトリル国立公園から更に東に向かうと、ゲイシール(Geysir)と呼ばれる熱水泉地帯がある。定期的に熱水を噴き上げる間欠泉を表す英語“geyser”が、このゲイシールを語源としていることからもわかるように、周辺にはたくさんの間欠泉が散在している。特に、ストロックルー(Strokkur)という名の間欠泉は、数分おきに30mもの高さに熱水と蒸気を噴出しており、見守る見物客たちを驚かせている。

ストロックルーの間欠泉(写真:菅昌 徹治)
ストロックルーの間欠泉(写真:菅昌 徹治)

 加えて、ゴールデンサークルの東の端には、火山の上に堆積した氷河から溶け出した水が流れ落ちるグトルフォス(Gullfos)の滝がある。その美しさから「黄金の滝」という意味の名を持つこの巨大な滝は、間氷期から何千年もの期間にわたり形成された。それぞれ11m、21mの落差を持つ上下2段からなり、周辺にもうもうと水煙が立ち込める滝には、平均して毎秒109m3の水が流れており、そのパワーには圧倒されてしまう。

グトルフォスの滝(写真:菅昌 徹治)
グトルフォスの滝(写真:菅昌 徹治)