失敗を繰り返さないための対策を

Q─マンション購入者はスリーブ不足をどのようにして知ったのか。

 A─欠陥が発覚したきっかけはインターネット掲示板への、匿名の書き込みだったと伝えられている。本来は事業主が購入者に直接伝えなければならないのに、そうでなかったのは消費者対応の面で問題がある。

Q─書き込みがあった後、事業主はどう対応したのか。

 A─最終的には、契約を解除するとともに、建物を解体することになった。平均価格は約1億4000万円、手付金は1割なので約1400万円になるが、契約解除に伴って、この手付金に加えて、迷惑料として手付金の2倍を支払うと伝えられる。

 ほかに、施工会社や設備工事会社は、建設費や解体費の負担を迫られることになる。経済的な負担は数十億円単位のばく大な金額になるが、姉歯事件の二の舞を避けられたことは、不幸中の幸いといえるのではないか。そういう意味では、匿名の書き込みがあったからこそ、最悪の事態を避けられた面もある。

Q─購入者の行動は変わるだろうか。

 A─姉歯事件をきっかけに、一種のブランド志向が強まった。「腐っても鯛」というが、一流企業は補償する力がある。今回も、購入者は経済的にはそれなりに補償された。ブランド志向は強まりこそすれ、揺らぐとは考えにくい。

Q─事業主、施工者など当事者に指摘したいことはあるか。

 A─失敗学の畑村洋太郎東大名誉教授は、「失敗を恐れ、失敗を恥じ、失敗を隠そうとするのではなく、白日の下にさらすことで、同じ失敗を繰り返すことを防げ」と教えている。失敗の中身と今後の対策を研究してほしい。

Q─トップ企業の鹿島建設でさえこんな状態では、建設業界は大丈夫なのか。

 A─2013年11月に、日本建設業連合会の中村満義会長(鹿島建設社長)と不動産協会の木村恵司理事長(三菱地所会長)が、建設現場で働く職人の労務費をめぐって意見交換した。奇しくも、今回の問題の当事者同士になる。

 「中村会長は人手不足の解消へ職人の賃上げが不可欠と強調し、発注価格の引き上げを求めた。木村理事長は、安定的な発注を図る意向を示す一方、賃金抑制の一因である建設業界の重層的な下請け構造の解消に努めるよう求めた」(時事通信)。両氏の主張自体は当を得ている。今振り返ると、何か運命的なトップ会談だったようにも感じられる。

細野透=建築ジャーナリスト元日経アーキテクチュア編集長

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