昨年、金融危機で世界の注目を集めた地中海の小国、キプロス。欧州屈指の観光・リゾート地で、日本企業にとっても今後の開発に参画する機会が生まれる可能性がある美しい島だ。だが、1974年の内戦以降、ギリシャ系とトルコ系の対立が続き、首都レフコシアには南北の分断線が走る。欧州事情に詳しい国土交通省大臣官房秘書室の菅昌徹治氏に現状を報告してもらった。(ケンプラッツ)

map_cyprus

 キプロス(Cyprus)は、地中海に浮かぶたくさんの島々の中で3番目の大きさを誇る、面積約9200km2の島である。それよりも大きいシチリア及びサルデーニャがイタリアの一部であるのに対し、キプロスは1つの島だけで国家(キプロス共和国)を成している。また、シリアまで60km、エジプトまで90kmの距離と、中近東諸国に極めて近い地中海東端に位置しているにもかかわらず、2004年にEU(欧州連合)に加盟し、2008年からはユーロを通貨としているヨーロッパの一員でもある。

 温暖な地中海性気候に恵まれたこの島では、美と愛の女神・ヴィーナス(アフロディーテ)が誕生したとされる海岸や、女人禁制の修道院がそびえる山岳地帯など、様々な景観を楽しむことができ、ヨーロッパ諸国やロシアから多くの人々が避寒などに訪れている。

ヴィーナスが誕生したとされる海岸(写真:菅昌 徹治)
ヴィーナスが誕生したとされる海岸(写真:菅昌 徹治)
海抜750mの山頂に建つスタブロヴニー修道院(写真:菅昌 徹治)
海抜750mの山頂に建つスタブロヴニー修道院(写真:菅昌 徹治)

 しかし、まるでパラダイスのように見えるこの国において、共和国政府の実効支配が及んでいる地域は島全体の約6割にとどまっており、首都・レフコシア(別名ニコシア)も40年近くの期間にわたり分断状態にある。