東京オリンピックの盲点

 政府の中央防災会議は2013年12月、首都直下地震の最新被害想定を公表した。これに関連して、2020年東京オリンピック&パラリンピックにおける、帰宅難民の「おもてなし」対策が重要な課題として浮かび上がった。

 全国紙は次のように報じた──。「東京都は、東京オリンピックの会場内に緊急地震警報が流れた場合、地震を警戒したことがない外国人客がパニックを起こしかねないと判断。主な会場ごとに避難誘導計画を策定するほか、多言語表記の案内を用意するなどの準備を進める」

 しかし、ここには、大事な問題がスッポリと抜け落ちている。会場を避難した後、行き場を失って帰宅難民となった彼らを、誰がどのようにして保護するのか。

 振り返ると、2020年オリンピックの東京招致を巡って、賛成論と反対論が交錯した。賛成論は「東日本大震災で大きく傷ついた日本に明るい希望をもたらす」。反対論は「東北復興など災害対策が先」、「東京一極集中を加速するので防災上問題」。日本は地震国なので、賛成・反対の両論とも、災害を忘れられないのがつらいところだ。

 しかし、決まったからには、ホスト国としての責任と、防災大国としてのプライドを示さなければならない。2020年に、海外から東京を訪れてくれた方々に対して、日本人ができる最高の「おもてなし」。それは、仮に競技の期間中に地震が発生したとしても、無事に母国まで帰っていただけるように対処すること。特に、身体に障害を持つパラリンピックの参加者は、何が何でも守りたい。