“藻”のバイオマスで省エネを図る、そんな機構をファサードに持つ建築。この建築は、昨年の春、話題になったのでご存知の方も多いかもしれない。

2013年3月、ドイツ・ハンブルグのInternational Building Exhibitionに出展されたBIQハウス。施工者はOtto Wulff Bauunternehmung GmbH(写真:Colt International, Arup Deutschland, SSC GmbH)
2013年3月、ドイツ・ハンブルグのInternational Building Exhibitionに出展されたBIQハウス。施工者はOtto Wulff Bauunternehmung GmbH(写真:Colt International, Arup Deutschland, SSC GmbH)

 バイオマス(注1)は、化石資源由来のエネルギーや製品の代替品として、CO2(二酸化炭素)の排出量削減への貢献が期待されている。

 中でも、微細藻類が光合成で産生する炭化水素やオイルなどの「藻類バイオマス」(注2)の活用に注目が集まっている。このバイオ燃料は、植物由来のバイオ燃料に比べて、桁違いに生産効率が高く、またトウモロコシなどのように食品利用との競合もない。

設計コンペで藻のバイオマスを提案

 2008年、オーストリアで活躍するスプリッターワークという設計事務所からアラップに、設計コンペの協力依頼があった。それは、2013年にドイツのハンブルグで開催される国際建築展「スマート・マテリアル・ハウス」への出展であった。

コンペ案を表したアラップのスケッチ。夏はダブルスキンの外皮が開いて排熱し、冬は太陽光で藻の入ったパネルの水温を上げると書かれている(資料:Arup)
コンペ案を表したアラップのスケッチ。夏はダブルスキンの外皮が開いて排熱し、冬は太陽光で藻の入ったパネルの水温を上げると書かれている(資料:Arup)

 建築家のコンセプトは「スーパー・ネイチャー(超自然)」。集合住宅を第二の外皮で覆い、外部と内部の間の“中間気候”を生み出すことだった。当時アラップでは、都市における“環境配慮型インフラ”を整備する手法として、微細藻類を取り込んだファサードの活用を模索し始めたところだった。

 何とかこのコンペで“藻のファサード”を使って“中間気候”を生み出せないものか…。