ケンプラッツでは、学科製図.comが集めた一級建築士製図試験の“再現図面”をサイトで公開する「web再現図面展」を今年も実施する。製図試験を、受験生はもちろんのこと、より多くの人に実感してもらうためだ。試験が建築士に求めるスキルとは何か。それに対して受験生たちはどのような図面を描いて応えたのか――。2013年の一級建築士製図試験を解説する。

再現図面とは何か?

 私たち学科製図.comでは、試験終了後2週間以内の記憶が鮮明なうちに、試験当日の答案を再現した図面を「再現図面」と定義し、それらを受験生から提供いただくことで試験分析を行っております。

 平成20年よりケンプラッツ上においてweb版再現図面展を行っておりますが、今年も編集部から要望をいただきました。試験結果の発表が予定されている12月19日を前に、再現図面の中から数点を公開すると共に、本年度試験の俯瞰(ふかん)してみようと思います。

本年度試験問題文の概要

 本年度試験問題文(以下、問題文)をwebで公開することを試験元が許していないので、ここに掲載して紹介することができません。問題文をご覧になっていない方のために、簡単ですが問題文の概要を説明しておきましょう。

 本年度の課題は、「大学のセミナーハウス」でした。昨年は地域図書館、一昨年は老人健康保健施設が出題されましたが、それらが図書館法や老人福祉法等の法律によって規定される施設であったのとは異なり、セミナーハウスという名称の施設の空間や機能を規定する法律はありません。確認申請上の建物用途においても、教育施設、研修施設、宿泊施設、あるいは寄宿舎など、その運営実態に即したいくつかの可能性が存在し得る施設でした。「大学の」という但し書きが添えられることでその可能性はいくらか限定されるものの、駅前の大学サテライトのようなものから山間のゲストハウスのようなものまで考え得る、出題範囲が例年に比べて大きいと言える課題でした。

 そのような範囲から出題されたのは、「都市近郊の湖畔に建つ美術系大学のセミナーハウス」でした。そして、宿泊を伴うセミナー活動を行う場所であると共に、豊かな自然を満喫できる場であること、地域住民との交流の場であることが求められていました。

 敷地は、北から南に下る斜面の裾に位置し、南に湖を臨む平坦な土地で、形状は東西50m、南北35m。湖に向かう南側は、湖畔越しに「遠くに山々が見え景色がよい」と注釈がついており、東側及び北側は樹林に面しています。西側には企業保養所(地上2階建て)があります。接道条件は南側に歩道付幅員12mの道路のみとなっています。都市計画区域及び準都市計画区域外の区域でしたが、景観保全のために敷地建ぺい率60%、容積率200%、及び2/10以上の勾配屋根が求められる敷地とされていました。

 この敷地に、主要構造は自由、地上2階建て1500m2~1800m2の建物を計画することが要求されました。

 内部空間としては、研修部門、宿泊部門、共用・管理部門の3つの部門から構成され、特に研修部門は、前述した地域住民との交流の場となるよう配慮することが盛り込まれました。宿泊部門は、洋室4人室を6室、和室12畳室を2室、教員・講師用として洋室個室を2室計10室が求められています。外部空間としては、食堂と一体的に利用可能な屋外テラス、車椅子利用者用を含む2台分の駐車場と10台分の駐輪場が要求されていました。

 要求図面は、配置図兼1階平面図、2階平面図、梁伏図、それに断面図の計4面でした。

 計画の要点は、例年通り、建築計画、構造計画、設備計画について問われていました。