タワーマンション群を歩く

 東横線と南武線、横須賀線に囲まれた地域には、いくつかの業務ビルやホテルもあるが、中心的な存在は数多くのタワーマンションだ。2008年ころに建てられたものが多いが、現在も、開発は続いている。

現在工事中の大規模商業施設(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)
現在工事中の大規模商業施設(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)

 この地域のマンションの一部には川崎市中原市民館が入居するなど、公共施設や保育所などがあるが医療機関はほとんど入居していない。小杉地域には駅の近くに聖マリアンナ東横病院や日本医科大学武蔵小杉病院などの中核病院があるし、個人の医院も多いため、あえてつくっていないようだ。大型商業施設としては駅の西側にイトーヨーカドーがあるが、現在、東側にもイトーヨーカドーによって10万m2を超える大規模商業施設が建設されている。

商業施設のイメージパース(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)
商業施設のイメージパース(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)

 マンション群のある駅東側を歩いて分かったのは、西側に比べて、工場跡地の利用が多いため、敷地が広く、敷地内に緑地や公園がゆったりと設けられていることだ。近くの不動産屋で聞くと、交通の便や生活のしやすさなどで武蔵小杉全体の居住イメージが向上していること、さらに2014年度から消費税が上がることもあり、新築物件は即時完売になるなど、需要に対して供給が追い付かない状態が続いているという。また、中古物件も少なくなっているそうだ。これまでは80m2を超える物件が中心で、価格は7000万円程度で推移してきたが、それらの住戸の資産価値はまったく落ちていないという。しかし、今後は、東京オリンピックの影響で、資材の高騰や人出不足による建設コストの高騰が予想されている。「販売価格を考えると、今後は80m2を超える物件は少なくなり、70m2程度の物件が多くなるのではないか」と街の不動産屋は語っていた。

現在工事中のシティタワー武蔵小杉(地上53階建て、高さ約185m)は販売価格を抑えるため、住戸の占有面積が55.23m2~72.35m2とコンパクトになっている(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)
現在工事中のシティタワー武蔵小杉(地上53階建て、高さ約185m)は販売価格を抑えるため、住戸の占有面積が55.23m2~72.35m2とコンパクトになっている(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)

 タワーマンションでまちづくりが進められている武蔵小杉での生活を豊かにするには、マンションだけではなく、地域の資源をいかにうまく取り入れて生活するかが重要だ。20分も歩けば等々力緑地があり、サッカー観戦も楽しめる。その先には川崎市民ミュージアムもあり、現代美術やマンガ・アニメを楽しめる。近くには多摩川が流れていて、河川敷で遊ぶこともできる。利便性に加えて、こうした環境を享受して、都心生活を楽しむことが大切だろう。子供たちが活き活きと暮らせるような街になってくれればと願う。

仲原正治(なかはら・まさはる)
クリエイティブ・ディレクター
1949年東京生まれ。1974年東北大学法学部卒業。横浜市職員として福祉、都市再開発、横浜美術館、赤レンガ倉庫の開発(みなとみらい21)に従事し、2004年からはクリエイティブシティの専門家として中心的な役割を担ってきた。2012年5月に横浜市を退職し、クリエイティブ・ディレクターとして独立。文化芸術によるまちづくりの支援や創造都市のネットワークを活用した仕事を進めている。現在、赤煉瓦ネットワーク運営委員、石巻「日和アートセンター」運営アドバイザー、MZ arts顧問(陶磁器・現代アートギャラリー)。