タワーマンションに住むリスクをどう解消するか

 もちろん、タワーマンション特有のリスクも当然のように存在する。まず、ヨーロッパでは超高層建築に居住する人に対する心身の影響が問題視されている。精神的疾患者の増加や子供の自立の阻害、閉鎖された空間での生活に伴うコミュニティ不足による社会的な孤立者の増加などが指摘されている。そのため、ヨーロッパでは、高層住宅の建設を禁止している国や一定の高さ以上で子供を育てることを禁止している国もある。

 また、震災に伴う2次災害については、いろいろな課題が山積している。エレベータが長期間停止した場合、高層階に居住する人は、その上り下りに大きな負担がかかる。特に高齢者にとっては死活問題となる。超高層に限ったことではないが、停電が長く続いた場合は、炊事、洗濯、トイレの使用など生活に大きな支障を生じる。

来年竣工予定のプラウドタワー武蔵小杉。地上45階建て、高さ約160m、住戸数約600戸(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)
来年竣工予定のプラウドタワー武蔵小杉。地上45階建て、高さ約160m、住戸数約600戸(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)

 こうしたリスクを抱えながらも、都心部の超高層での生活を享受したいという人は少なくないのだろう。タワーマンションは売れ行きが好調だ。きちんとリスクがあることを認識し、それを前提に、いかに不安なく楽しんで住んでいくかということを考えていく必要がある。

 非常時に、マンションの管理組合として、どのようなことができるのか、どうしたらリスクを最小限に抑えられるか、を日頃から話し合っていくことが重要だ。家族や地域との関係性を希薄にしてしまう超高層のもつ閉鎖性やプライバシーの保護を優先する住まい方を、私たちの英知と創造性で克服していくことが必要ではないだろうか。

プラウドタワーの前面道路の拡幅工事。手前の建物も撤去される予定だ(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)
プラウドタワーの前面道路の拡幅工事。手前の建物も撤去される予定だ(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)

 例えば、管理組合で水や食料の十分な備蓄をしていくとともに、プライバシーの問題はあるが、家族構成や高齢者の有無の把握が必要なのではと思う。また、ライフラインがストップした時のマニュアル作りや炊き出しなどができるような設備の用意、行政との連絡体制の緊密化も大切だ。プライバシーが尊重されるのが集合住宅であるが、あまり閉じこもらないで、様々な行事に出て、日頃から近隣の人と親しくすることも重要だろう。自治会や町内会の行事にはできるだけ参加し、管理組合の委員なども数年に1回は就任する。こうしたことを通じて、地域の人々と仲良くなる。何かあった時は、「遠くの親戚よりも近くの他人」の気持ちを忘れてはならない。

 一方、行政側からすると、高層オフィスや超高層住宅ができると、インフラの整備にカネがかかるため開発負担金や公共施設の整備を開発者に求めることも多い。特に都心部では道路整備や学校の整備が必要になる。超高層ではオール電化も多く、冷暖房は必然となるため、電気使用量が増える。必ずしもエコにつながらないケースもあるはずだ。また、タワーマンションの50年後を考えると、補修の問題、設備更新の問題など、まだ我々が経験したことのない様々な問題が生じてくることも考えられる。