武蔵小杉地区の開発動向

 武蔵小杉地区は、もともと工場や社宅が集積していた地域だったこともあり、工場などの跡地活用が課題となっていった。渋谷からは東横線特急で12分程度、南武線で川崎まで12分という交通の利便性もあり、規制緩和以降、次々に超高層マンションが計画された。2007~09年はそのピークで、リエトコート武蔵小杉(45階)、THE KOSUGI TOWER(49階)が作られ、当時としては日本一の高さを誇ったミッドスカイタワー(59階、約198m)も2009年に竣工している。

JR南武線、東急東横線、JR横須賀線に囲まれた場所にあるタワーマンション群(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)
JR南武線、東急東横線、JR横須賀線に囲まれた場所にあるタワーマンション群(写真:仲原正治、撮影:2013年11月25日)

 このマンション群が建設された土地は、JR南武線、東急東横線、JR横須賀線に囲まれた場所で、工業地域となっていたため、ひとつの敷地が広く権利者の調整が簡単で、開発が容易に進められた。

 川崎市は積極的にこの地域の開発を進めることで、川崎駅周辺とは異なった都市型居住中心のまちづくりを推進してきた。川崎市のホームページでは、――当地区は本市の中央部に位置し、JR南武線・横須賀線及び東急東横線・目黒線が交差する交通結節点であり、本市の総合計画である新総合計画「川崎再生フロンティアプラン」では、都市の拠点機能を整備するため「民間活力を活かした個性と魅力にあふれた広域拠点の形成」を図る地区として、川崎駅周辺地区及び新百合ヶ丘駅周辺地区とともに重点的にまちづくりを進める地区と位置付けています。また、市の都市計画の基本方針である「都市計画マスタープラン小杉駅周辺まちづくり推進地域構想」に基づき、将来のまちづくりの方向性を示し、新たな開発計画等を適切に誘導しています。これらの上位計画に基づき、横須賀線武蔵小杉駅の整備と併せ、先端技術を中心とした研究開発・生産機能の高度化を図るとともに、ユニバーサルデザインに配慮しながら駅前広場、道路等の公共施設を整備改善し、商業・業務・文化交流・医療・文教・都市型居住等の機能を集積させた「歩いて暮らせるコンパクトなまちづくり」を推進しています。――と記載されている。

 この方針に基づいて、大規模な再開発事業を推進するため、高度利用地区や用途地域の見直しなどを進め、民間が土地の高度利用を容易にできるようにしている。

 こうした川崎市の政策により再開発が進み、高さ100mを超えるタワーマンションは現在工事中の物件を含めて、11棟にのぼっている。また、この地域の再開発事業等で建設された他のマンションを含めると約8500戸の新しい住宅が供給され、2万5000人近くの人口増が見込まれている。

 市は近辺の道路整備等だけではなく、人口増に伴い、近隣小学校の増築計画を打ち出している。また、2017年度開校予定で新たに小学校を建設することにもなっている。

小杉駅周辺住宅市街地総合整備事業・整備地区計画図(資料:川崎市ホームページより)
小杉駅周辺住宅市街地総合整備事業・整備地区計画図(資料:川崎市ホームページより)