東京都千代田区にある旧グランドプリンスホテル赤坂の跡地で超高層ビル2棟の新築工事を進める西武プロパティーズ(埼玉県所沢市)は11月18日、敷地内で保存する「旧館」の曳き家工事を公開した。移動距離は44m。施工は大成建設が手掛けている。
旧館は旧朝鮮王室の邸宅として1930年に完成した鉄筋コンクリート造、地上2階建ての建物。宮内省内匠(たくみ)寮(現在の宮内庁管理部)が設計して、清水組(現在の清水建設)が施工した。
旧館は戦後、西武鉄道の所有となり、55年に客室数31室の赤坂プリンスホテル(通称、赤プリ)として開業した。83年に丹下健三氏の設計で40階建ての「新館」が開業してからは、婚礼施設やレストラン、バーなどとして使われてきた。
西武プロパティーズは11年3月にホテルの営業を終了。新館は大成建設・西武建設JV(共同企業体)が「テコレップシステム」と呼ぶ騒音や粉じんを抑える工法を使って、13年7月までに解体した。
跡地には地下2階、地上36階建てで高さ180mのオフィス・ホテル棟と、地上24階建てで高さ90mの住宅棟を建てる。総事業費は約980億円で、16年夏ごろの開業を目指す。
旧館は11年に東京都の有形文化財として指定された。「貴重な文化財を保存して、建て替え計画のシンボルにしたい」。西武プロパティーズ都市開発部の妹尾寛仁ジェネラルマネージャーはこう話す。
ただし、保存後の旧館の利用方法は現時点で明らかにしていない。妹尾ジェネラルマネージャーは「関係官庁と協議して、多くの人に利用してもらえる施設にしたい」と述べるにとどめた。