初めてこのプロジェクトの写真を見たとき、アラップがエンジニアリングを担当したのはこの石柱が並ぶランドスケープなのだろう、と思った。アイゼンマンが設計したホロコースト記念碑のようなイメージ。事実は、こちらは天然の景観であり、北アイルランドにある世界自然遺産だという。この六角形の石柱が天然…?事務所に居合わせたアイルランド人の同僚に確かめてみるが、彼もそうだと言う。
焼失したビジターセンターを再建
ジャイアンツ・コーズウェイ。年間80万人が訪れる英国・北アイルランドにある世界遺産である。首記の六角形の石柱は、火山活動によってできた玄武岩の柱で、約4万本が海岸線8kmに渡って高低差を伴いながら群列を成す。
こちらのビジターセンターが、2000年に火災で焼失した。しばらく小屋のような建物で対応していたのだが、2005年、政府が世界遺産へのゲートとしてふさわしい施設をつくろうと、建て替えの設計コンペを開催した。
コンペで選ばれたのは、アイルランドのダブリンで活躍する建築家、ヘネガン・ペンである。複数名が、この海岸を見下ろす崖の上に建物を建設すること提案したのに対し、ヘネガン・ペンの案は交通の起点となる難しい与条件をクリアしながら地中に建物を埋めるというものであった。ここに到着すると、歴史あるコーズウェイ・ホテル以外には視界を邪魔するものは何も無い。
ビジターセンターは、すべて埋めるわけでもなく、石柱が噴火活動によって地底から盛り上がってきたイメージを喚起させるかのように少しだけファサードを出し、ランドスケープと一体化することがコンセプトであった。