長期優良マンションも少ない

 低炭素住宅とほぼ同様の優遇措置が得られる認定住宅に、長期優良住宅がある。長期優良住宅の認定戸数は、09年6月から13年9月までの累計で43万4321戸となった。ただ、その内訳を見ると、戸建ては97%で、マンションはわずか3%に過ぎない。“長期優良マンション”はハードルが高く、デベロッパーは手を出しにくいのが実情のようだ。

 「特に耐震性の要件が厳しい。耐震等級2が確保しにくく、免震建築物でないと長期優良住宅を申請することはない」と、あるマンション・デベロッパーの企画担当者は明かす。また、別のデベロッパーの担当者からは、「当社は耐震性は標準仕様でクリアできるが、高さ制限のある地域では、可変性の要件で求められる躯体天井高が確保しにくい。長期優良住宅を申請するかどうかは、立地次第だ」という話を聞いた。

2013年9月末時点の長期優良住宅建築等計画の認定戸数の割合。総戸数は43万4321戸、一戸建ての住宅は42万1544戸、共同住宅等は1万2777戸(資料:国土交通省の資料を基に日経ホームビルダーが作成)
2013年9月末時点の長期優良住宅建築等計画の認定戸数の割合。総戸数は43万4321戸、一戸建ての住宅は42万1544戸、共同住宅等は1万2777戸(資料:国土交通省の資料を基に日経ホームビルダーが作成)

 都市の低炭素化の促進に関する法律は市街化区域等内、つまり都市部の建築物が対象となる。現在の日本で、マンションは都市生活に不可欠な住宅だ。都市の低炭素化にマンションが与えるインパクトは大きい。低炭素マンションの普及は地球温暖化対策の推進を図るうえで緊急を要する重大な課題といえる。国会での審議で、国交省住宅局長(当時)の川本正一郎さんは、低炭素住宅について「施行後数年で、着工戸数が都市部の新築住宅の約2割を占めるようにするのが目標」という趣旨の答弁をしている。

 耐震性や可変性など多くの要件がある長期優良マンションと比べ、低炭素マンションは省エネ性だけを向上させればよい。消費税増税が決まったことで、長期優良マンションよりハードルが低く、ほぼ同様の税制優遇が得られる低炭素マンションのニーズが拡大する可能性は高い。今後のさらなる建設費アップの観測も併せて考えると、低炭素マンションの普及は意外と早まるかもしれない。

 2020年には、全ての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられる予定だ。それに向けて、2016年度には床面積2000m2以上のマンションの省エネ基準への適合義務化がスタートする。こうして考えると、今から低炭素マンションの経験を積んでおいても損はしないはずだ。認定取得のハードルはけっして低くはないが、設計者の知識向上や創意工夫、そしてマンション・デベロッパーの意欲的な取り組みが求められている。