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なぜ低炭素マンションが増えないのか

2013/11/05

日経ホームビルダー

 国土交通省によると、「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく低炭素建築物新築等計画の認定戸数は、2013年1月から同9月までの累計で1769戸となった。その内訳は戸建て1212戸、マンション557戸。下のグラフを見てわかるとおり、戸建ては月を追うごとにほぼ右肩上がりに増加している。

低炭素建築物新築等計画の認定戸数の推移(資料:国土交通省)

 一方、マンションの動きは鈍い。3月に初めて152戸が認定されたが、これは1棟のみの実績だという。9カ月を経ても大きく増える傾向は見えてこない。なぜ、“低炭素マンション”が増えないのだろうか。

 低炭素住宅の認定制度は2012年12月4日にスタートした。その認定基準の指標は、13年10月1日に施行された新しい省エネ基準と共通だ。「建物の外皮性能(断熱性能)」は次世代省エネ基準(99年基準)と同程度のレベルを満たせばよい。「一次エネルギー消費量」は新しい省エネ基準をさらに10%以上削減する必要がある。以上の2つの指標に加え、「その他の低炭素化に資する措置」として指定される節水対策やエネルギーマネジメントなど8項目のうち2項目以上を講じることなどが認定の要件になる。

 マンションで低炭素認定を申請する場合、シンプルな戸建てと比べてパターンは多岐にわたる。住戸1戸のみ、各住戸ごと、建築物としてのみ、住戸と建築物の両方――など。

 住戸として認定を取得すれば、分譲マンションの住戸の購入者が住宅ローン減税や登録免許税の軽減などの税制優遇の恩恵を受けることができる。建築物全体として認定を取得すれば、容積率緩和が受けられる。太陽熱集熱や太陽光発電、燃料電池、蓄電池など低炭素化に必要な設備を設ける部分について、床面積の1/20を限度として容積率算定の延べ面積に算入しなくてよい、という緩和措置だ。

 住戸ごとの認定では、その住戸単独で外皮性能の基準を満たさなければならない。仕様や専有面積が同じでも、最上階と中間階、妻側住戸と中住戸など、住戸の位置で計算結果が異なってくるケースがあるからだ。建築物全体として認定を受ける場合は、各住戸が外皮性能の基準を満たせばよく、共用部の外皮性能は問われない。ただし非住宅部分は建築物としての外皮性能(PAL*)の基準を満たす必要がある。

 一次エネルギー消費量も住戸ごとの認定では住戸単独で基準を満たせばよい。ただ、マンションにおける住戸の一次エネルギー消費量計算については、当該住戸の外皮性能値(q値、mC値、mH値)に代えて、全住戸平均外皮性能値(平均みなし値/q*値、mC*値、mH*値))を使って計算できるようになった。

 一方、建築物全体の認定では、共用部と非住宅部分についてそれぞれ一次エネルギー消費量を求め、各住戸の合計消費量と合算し、全体の一次エネルギー消費量が基準を満たす必要がある。共用部と非住宅部分の算定には、非住宅建築物の考え方を適用する。

 このように低炭素住宅の認定申請において、マンションは戸建てと比べて煩雑だ。実務レベルの問題として、「住戸ごとに真南からの振れ幅が大きく異なるマンションの場合、一律に基準をクリアできず非認定住戸が生じる可能性がある」「外皮性能で不利なピロティ上部の住戸をなくす計画を強いられる」「太陽光発電などの創エネを住戸で享受しにくい」などの困難が生じることも想像に難くないだろう。

 認定基準を満たすため、現状の商品企画として備えている付加価値やコスト競争力を下げる方向への仕様変更も起こり得る。超高層マンションや大規模マンションでは住戸数が数百戸に及ぶので、住戸ごとに計算する設計者の手間も増える。それ以前の問題として、低炭素住宅や新しい省エネ基準に精通した意匠設計者が多くないという現実もある。

小原 隆日経ホームビルダー

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