1657年の「明暦の大火」で焼失した旧江戸城の天守を再建するには、約350億円かかるものの、経済波及効果は約1000億円に上る――。こんな試算を認定NPO法人の「江戸城天守を再建する会」(東京都千代田区)が取りまとめた。実現性についての調査を外部機関に依頼して、結果を10月25日に発表した。世界に誇れる日本の伝統や文化の象徴として、2020年東京五輪の開催に合わせた再建を訴える。

日本武道館や科学技術館のある北西から眺めた江戸城天守の再建イメージ。天守台の下からの高さは55m。地下1階、地上5階建てだ。建築面積は約1300m2、延べ面積は約4000m2(資料:江戸城天守を再建する会、三浦正幸、エス)
日本武道館や科学技術館のある北西から眺めた江戸城天守の再建イメージ。天守台の下からの高さは55m。地下1階、地上5階建てだ。建築面積は約1300m2、延べ面積は約4000m2(資料:江戸城天守を再建する会、三浦正幸、エス)

江戸城天守の北立面図。屋根の先端の鯱(しゃち)など複数の箇所に金を使用している。鉄砲を打つための穴「狭間(さま)」がないことから、平穏な時代の天守として建てられたという(資料:江戸城天守を再建する会、三浦正幸、エス)
江戸城天守の北立面図。屋根の先端の鯱(しゃち)など複数の箇所に金を使用している。鉄砲を打つための穴「狭間(さま)」がないことから、平穏な時代の天守として建てられたという(資料:江戸城天守を再建する会、三浦正幸、エス)

本体は伝統木造で250億円

 建築面の調査は、日本都市計画学会の調査検討委員会(委員長:伊藤滋・早稲田大学特命教授)が実施した。伝統木造による再建が耐震、防火、材料調達などの面からも可能だと判断している。

 総事業費は約350億円と算定した。本体工事に250億円、仮設と天守台改修などに50億円、展示物などに50億円を見込む。

 調査検討委員会の委員で広島大学大学院の三浦正幸教授によると、本体工事費用のうち大きな割合を占めるのが木材だ。断面が36cm四方の国産ヒノキ約1000本を含む約1万本の木材を使用する。「節なしなどにこだわらなければ安価に調達できる」と言う。「木造にすれば耐用年数が400~500年ほどになり、修理していけば1500年は持つ。80年程度しか持たない鉄筋コンクリート造の天守に比べると、必ずしも高価とは言えない」

 さらに三浦教授は、木造にすることのメリットを次のように強調する。「木材を大量に使うことで、荒れている全国の森林を再生させるきっかけにもなる。また、国産ヒノキは見た目が美しく、内部を現しに仕上げることでその様を伝えられる。外国人の目に触れることから、ヒノキの輸出にもつながる」

 15年に設計、16年に工事に着手して、20年の竣工を想定する。

想定スケジュール。2020年東京五輪に合わせての竣工を目指す(資料:江戸城天守を再建する会)
想定スケジュール。2020年東京五輪に合わせての竣工を目指す(資料:江戸城天守を再建する会)