防災科学技術研究所と兵庫県は10月8日から15日にかけ、兵庫耐震工学研究センター(E-ディフェンス)において、新耐震基準で設計した鉄骨造3階建てを繰り返し揺らす実大振動実験を実施した。阪神大震災に遭った建物が現存し、今後発生が予想されている南海トラフを震源とした巨大地震に遭遇したら――。現実にも発生し得るシナリオを、世界最大級の実大振動台で検証した。

10月15日に公開された実大振動実験(写真:池谷 和浩)
10月15日に公開された実大振動実験(写真:池谷 和浩)

 一連の実験で研究チームがまず実施したのが、阪神大震災における被害の再現だ。阪神大震災が起きた1995年1月17日、JR鷹取駅で観測された地震波(JR鷹取波)を用いて、試験体を一方向加振した。波形は揺れが強かった南北方向を抜き出したものだ。

 試験体は幅12m、奥行き10m、高さ10.8mの3階建てで、床はコンクリートスラブ。設計上、主要構造部は新耐震基準に適合しているが、接合部は95年頃に一般的だった仕様としている。この加振は10月10日に実施した。

最大加速度759galのJR鷹取波による加振の様子。ブレースは仮設のもので、水平応力にはラーメン接合のみで耐えている(動画:防災科学技術研究所)

 最大層間変形角は1階で記録され、14分の1に達した。構造計算上の想定をはるかに上回る変形であり、映像でも建物が明らかに歪んでいる様子が確認できる。この際、柱・梁の接合部が3カ所破断した。2カ所が1階天井、1カ所が2階天井だ。

JR鷹取波による加振の後に確認された被害。写真は1階天井。柱と梁の接合部が破断した(写真:防災科学技術研究所)
JR鷹取波による加振の後に確認された被害。写真は1階天井。柱と梁の接合部が破断した(写真:防災科学技術研究所)