芸術・文化の分野で優れた功績を挙げた人たちに贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」。25年目を迎えた今年は、建築部門で英国のデビッド・チッパーフィールド氏、彫刻部門で英国のアントニー・ゴームリー氏が受賞した。
建築部門は、初回のI・M・ペイ氏からはじまり、これまでに安藤忠雄氏や、2020年の東京オリンピックで時の人となったザハ・ハディド氏など名立たる建築家が受賞している。また彫刻部門も、ジョージ・シーガル氏、三宅一生氏など、著名人が並ぶ。いずれも時代の文化や美を創造したアーティストだ。
今年の受賞者である建築家のデビッド・チッパーフィールド氏と、彫刻家のアントニー・ゴームリー氏は、アラップが何度も協働している。
チッパーフィールドの「ヘップワース・ウェイクフィールド」
まずは、チッパーフィールド氏の最近の作品の中から、「ヘップワース・ウェイクフィールド」を紹介したい。
ヘップワース・ウェイクフィールドは、英国ヨークシャー州のウェイクフィールドにある美術館で、彫刻家のバーバラ・ヘップワースの偉業をたたえ、総工費約3500万ポンド(日本円で約54億2500万円)で2011年に竣工した。
ここは蛇行したカルダー川に囲まれたエリアで、どこからでもその姿が望めるため、全てが正面であり、バックエリアを上手く隠す必要があった。チッパーフィールド氏は、1つの四辺形が、1つの展示スペースとなるよう、ヒエラルキーの無い不等辺四辺形をばらばらと配置したような計画とした。
この計画性のないように見える、無作為を装った計画が人に安らぎを与え、心もとない雰囲気を隠すというアイデアだ。チッパーフィールド氏は、「このアイデア自体はシンプルなものだが、その苦労は悪夢のようだった…。面白い空間にすべきだが、奇抜すぎてはいけないし、その幾何学的な配置が空間の自由度を奪うようではいけない」と語っている。