東海旅客鉄道(JR東海)が2027年の完成を目指すリニア中央新幹線について、詳細な駅の位置やルートを明らかにした。既に、リニア駅の周辺では複数のプロジェクトが始動している。それらについて解説する。リニア中央新幹線の詳細については既報「リニア詳細、全ルート・6駅の位置が明らかに」を参照してほしい。

リニア中央新幹線の駅を設置する品川駅。東海道新幹線ホームを東側から見たところ。現ホームのほか前面道路の直下も使って、リニア中央新幹線のホームを建設する(写真:日経アーキテクチュア)
リニア中央新幹線の駅を設置する品川駅。東海道新幹線ホームを東側から見たところ。現ホームのほか前面道路の直下も使って、リニア中央新幹線のホームを建設する(写真:日経アーキテクチュア)

東北縦貫線……常磐線などが品川に乗り入れ

 リニア中央新幹線の東京側ターミナルとなるのが品川駅。この周辺で大規模なプロジェクトが進行中だ。品川駅の拠点性を高める。

 まず挙げられるのが、東日本旅客鉄道(JR東日本)が14年度の完成を目指して東京-上野間の3.8kmに建設中の「東北縦貫線」だ。品川から離れているものの、品川とは密接に結びついている。

 東北縦貫線を建設する目的は、上野駅で折り返している常磐・宇都宮・高崎の3線と、東京駅で折り返している東海道線を相互に直通運転することだ。土浦や大宮など上野より北側にある駅と、東京や品川、横浜など南側にある駅を乗り換えなしに結ぶ。上野以北から品川までの所要時間は、京浜東北線や山手線を利用する場合に比べて約11分短縮する。

リニア中央新幹線の始発駅となる品川には、新線や再開発の計画が複数あり、注目が集まる(資料:日経アーキテクチュア)
リニア中央新幹線の始発駅となる品川には、新線や再開発の計画が複数あり、注目が集まる(資料:日経アーキテクチュア)

 東北縦貫線は運輸政策審議会(現・交通政策審議会)が00年の答申第18号で「15年までに開業することが適当」と位置づけた路線だ。混雑が激しい山手線と京浜東北線の東京-上野間の混雑緩和を主な目的としたものだ。

 神田駅付近の1.3kmは二重の高架にするなど、工事は大規模だ。既存の新幹線の上部に、東北縦貫線を施工する。東京駅のすぐ北側で線路の上空を首都高速道路が横切っていることもあり、二重高架への立ち上がり部分は勾配が33パーミルと在来線として最急の部類に入る。

東北縦貫線の工事の様子。2011年10月に神田駅付近の二重高架の上から撮影(写真:日経アーキテクチュア)
東北縦貫線の工事の様子。2011年10月に神田駅付近の二重高架の上から撮影(写真:日経アーキテクチュア)

 品川駅では東北縦貫線の開業に合わせて、大規模な改修工事を実施している。利用頻度の低かった臨時ホームを中心に、東海道線のホームを整理統合。上野方面からの電車が品川で折り返せるようにする。品川以北は高密度の運行ダイヤを想定していることがうかがえる。

 とはいえ、常磐・宇都宮・高崎の3線からみると直通先は東海道線だけ。宇都宮線と高崎線は大宮以南で事実上1つの路線であることを考慮しても、2線分の電車を1線では受けきれない。常磐・宇都宮・高崎線の電車は一部、現状と同様に上野で折り返す。

 JR東日本が02年に東北縦貫線について発表した際には、3線の記載順序を「宇都宮・高崎・常磐線」としていた。近年では「常磐・宇都宮・高崎線」と常磐線を先頭にしている。常磐線が優先的に乗り入れることを暗示しているかのようだ。

 常磐線には強力なライバルが存在する。05年に開業した「つくばエクスプレス」だ。現在つくばエクスプレスは秋葉原駅止まり。東京駅まで延伸する計画があるものの、具体化していない。14年度の時点では、常磐線が「先手」を打つ形となりそうだ。