交通アクセスが変える都市構造

 都は2013年1月、「『2020年の東京』へのアクションプログラム2013」をまとめ、防災、エネルギー、交通、スポーツ振興など8つの目標ごとに重点事業を設定した。2013年度から3カ年の計画で、事業費約2.7兆円を投じる。五輪開催の決定で、こうした取り組みが加速することが予想される。

・目標1(防災):首都直下地震への備え

・目標2(エネルギー):電力エネルギー改革の推進

・目標3(水と緑):水と緑の巡る豊かな都市空間の創出

・目標4(交通ネットワーク):地下鉄改革、羽田空港国際化

・目標5(産業力・都市力):「東京都・発」ビジネス支援

・目標6(少子高齢社会):「安心な街・東京」の実現

・目標7(人材育成・雇用):教育を立て直し、雇用を守る

・目標8(スポーツ):「スポーツ都市東京」の実現

 オリンピック招致委員会の計画書では、大会コンセプトは「2020年の東京」の実現に向けた取り組みと方向性が一致していると明記。五輪は、以下の目標を達成するためのプロセスであり、ゴールでもあると記されている。

・2020年東京大会のオリンピックスタジアム周辺、東京ベイゾーンの臨海地区、武蔵野の森地区、1964年東京大会の競技会場も残る駒沢地区を中心にスポーツクラスターを整備し、スポーツを楽しむことができる活気ある環境を生み出す。

・すでに高度に発達している東京の道路網を強化し、持続可能な大都市のモデルとして更なる成熟を目指す。首都圏の主要な幹線道路となる三環状道路は、都心への流入交通を減らし、競技会場が配置される都心部の交通渋滞の解消に重要な役割を果たす。また、選手村やオリンピックスタジアム、IBC/MPCが配置される東京ベイゾーン周辺等において主要幹線道路の整備が進められていることも特筆すべき改善点のひとつである。空路の面においても、選手村まで16kmに位置する東京国際空港(羽田空港)が強化される予定であり、2013年度末までに年間の発着容量を44.7万回まで増加する計画である。

・水と緑のネットワークを次世代に受け継いでいく。これには、都市公園など433haの整備が含まれる。都民や住民グループの協働により湾岸の埋立地から生まれ変わる88haにも及ぶ「海の森」は、2016年に概成予定である。また、街路樹100万本による直径30kmの緑のリングは、「グリーン・ロード・ネットワーク」を形成することとなる。

・住み訪れる人が、安心・快適に過ごすことができるよう、ユニバーサルデザインのまちづくりを推進する。2020年までには、ノンステップバスの導入や、駅や公共施設、病院等を結ぶ道路のバリアフリー化を完了させることを目指している。

・低炭素で高効率な自立・分散型エネルギー社会を創出する。

 交通アクセスの改善は、東京の都市構造を大きく変貌させる。首都圏の主要な幹線道路となる中央環状線、外環道、圏央道の3環状道路は2020年までに約90%が完成する予定だ。空港アクセスも改善が検討されている。国土交通省は2014年度予算で、東京都心と羽田空港、成田空港を結ぶアクセス線となる「都心直結線」について調査費を計上した。JR東海が2027年に品川-名古屋間で開業を目指すリニア中央新幹線の動向も注目される。

 さらに、バリアフリーの促進が、成熟した先進都市の基盤になる。オリンピック招致委員会の計画書では、会場、宿泊施設、交通施設などで、障がい者や高齢者をはじめとしたすべての人々が安全で快適に移動できるようにすることをうたう。特に、複数の移動手段の間の所要時間を最小にする観客ルートの接続性に注意を払うとしている。すべての観客が会場への道順をすぐ把握できるよう、適切な標識やシステムも整備する予定だ。