ついに東京で2020年のオリンピックが開催されることが決定した。我々の業界、大変なことになるかもしれない、というちょっとした恐怖心と、この熱にしばらく浮かされても良いかな、という高揚感、相半ばなのは私だけでは無いだろう。
オリンピック施設の計画はほとんど決定している。2020年の開催に相応しい、将来と地域を見越した施設にしていくことは当然ながら、過去のオリンピック施設を振り返って学びを得ることは決して悪いことではないはずだ。
ロンドン五輪「アクアティクス・センター」
2020年東京オリンピックのメーンスタジアムにもなる新国立競技場の設計者は、ザハ・ハディド氏である。彼女は2012年のロンドン・オリンピックでも、ある施設の設計を行った――。アクアティクス・センター、水泳競技場である。
50mの競泳用プール、25mの飛び込み競技用プール、50mのウォームアップ用プールの3つのプールから成るこの施設は、ロンドンにおいて、オリンピック基準を満たす初の水泳競技場であるばかりでなく、オリンピック後は地域に還元され資産となる。実はこの寄贈が建物の第一義であり、オリンピックのための観客増への対応は仮設で補うというプログラムであった。
オリンピック開催時には、観客1万7500人を収容、仮設部分を除く屋根面積だけでも1万1000m2の巨大施設である。