ロールから膜を引き出し人力で引っ張る
膜を支持する鉄骨フレームは18mピッチで計14フレームある。膜の張力が何らかのバランス作用をして鉄骨ともに全体を支持する構造ではなく、自立完結した鉄骨構造に膜の張力がかかる構造だ。
膜の張力を考慮した鉄骨になっている。各スパン間のつなぎ梁やタイロッドブレースまで入ると1スパンの鉄骨構造は完結するが、隣接するスパンまで決まって初めて膜を張れる状態になる。
一般的な膜屋根工事では鉄骨の上に膜を張るので、その場合は重機で吊り上げて張り広げることができる。しかし、この工事では膜を鉄骨の下に張る。下から見て「一枚物」の膜が張ってあるように見せるデザインだからだ。そのため張り込み作業には工夫がいる。
膜の張り込み作業は、まず夜間作業でスプレッターという機材に1スパンの幅18メートルの屋根膜のロールを取り付けて、広場側からタワークレーンで吊り込む。大梁の先端側から駅側にズリズリと人力で梁下に引き込んで広げていく。調理用ラップをロールから引き出すあの要領だ。
膜のロールを引き出し終わり、梁の下に広げてしまってからは、まず先端の袋状部にワイヤを仕込む。それから、全体を四方に少しずつ引っ張っていく。
膜端部には引っ張るための治具が450~500mmピッチに付いていて、鉄骨や仮設構造物から反力を取ってレバーやチェーンブロックなどの器具を使って人力で引っ張る。その日の夜間作業では、膜がたるまないところまで緊張し、仮固定したら終了する。