「逆V字形」で地組みするというアイデア

 大成建設は、1本ずつ切り出して製作した柱をそのまま建てるのではなく、一度地組みする方法を採用した。2本の柱をX字の交点で接合し、「逆V字形」にする方法だ。現場が始まってすぐに、喜田所長が提案した。

 この地組みのメリットを、喜田所長は次のように説明する。「建築物の建て方は、柱を建てて梁を渡すのがセオリー。しかし、今回の柱は斜めなので、1本ずつ柱を設置しても自立しない。仮に1本ずつ柱を設置するには、仮設材で梁を受けてから設置することになり、梁→柱の施工順になってしまう。慣れていない順序では、精度を高めることは難しい。2本の柱を逆V字形に組めば、自立する1本の柱として扱うことができる」。つまり、通常の柱→梁の順で施工できるように工夫したのだ。

逆V字形に地組みしたPCa柱(写真:大成建設)
逆V字形に地組みしたPCa柱(写真:大成建設)

地組みの時点で、鉄骨梁の端部も設置しておく(写真:日建設計)
地組みの時点で、鉄骨梁の端部も設置しておく(写真:日建設計)

地組みヤードには枕木による定規を設置した(写真:日建設計)
地組みヤードには枕木による定規を設置した(写真:日建設計)
枕木にPCa柱を置いたところ(写真:大成建設)
枕木にPCa柱を置いたところ(写真:大成建設)

 施工精度を高めるため、地組みの方法にも工夫を凝らした。覆工板を敷いたりコンクリートを打設したりして、地組みヤードを平坦に。そこに、定規となる枕木を置いた。枕木には、断面がひし形のPCa柱が収まる溝を設けてある。PCa柱をクレーンで吊って枕木に降ろせば、逆V字型の規定の角度となる仕組みだ。

 つくった枕木は約200個。PCa柱を養生する役割もある。