富士山が世界文化遺産として登録されることがほぼ確実、というニュースで世間は盛り上がっている。今後増加するであろう観光客に対応する施設を、景観を守りながら維持、もしくは建設していくのは難題に違いない。
ダラムの歩行橋
同じく世界文化遺産で有名な英国・ダラム市に、アラップ社の創業者オーヴ・アラップが設計し自ら最高傑作と自負する橋が架かっている。「ダラムのフットブリッジ(歩行橋)」である。
ダラムの町は、蛇行するウィア川とその渓谷によって三方を囲まれた台地にある、天然の要塞都市だ。11世紀に建てられた大聖堂とダラム城が世界遺産となっている。ダラム城は1832年に開校したダラム大学の学生寮となったのだが、1960年頃には学生の増加によって、川を渡った離れた場所にも学生組合会館を建てる必要が出てきた。その施設同士の動線を結ぶ役割を担っているのが、この歩行橋である。
歩行橋の完成時には大聖堂とダラムは世界遺産登録されていなかったが、歴史があり美しいダラムの町での建設工事に対しては、市民からも大きな関心が寄せられた。そして、設計者に指名されたのが、オ―ヴ・アラップであった。