アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに、アブダビ投資評議会(Abu Dhabi Investment Council)の本部が入居する、高さ150mのツインタワーが出現した。「アル・バハール・タワーズ」。2012年の完成で、CTBUH(高層建築と都市居住に関する国際委員会、米国・シカゴ)の「2012年超高層ビル 革新賞」を受賞した。その理由は、昆虫の巣のような、植物のような何とも表現しがたい外観に象徴される、様々な試みによるものである。

設計は英国のアエダス(Aedas)。アラップは、構造設計、建築設備設計、火災安全計画、耐風設計、ファサード・エンジニアリングのほかに、音響、IT、照明、セキュリティ、交通計画、ロジスティックの専門的アドバイスを行った。25層、8万2000m2の開発(資料:Arup)
設計は英国のアエダス(Aedas)。アラップは、構造設計、建築設備設計、火災安全計画、耐風設計、ファサード・エンジニアリングのほかに、音響、IT、照明、セキュリティ、交通計画、ロジスティックの専門的アドバイスを行った。25層、8万2000m2の開発(資料:Arup)

イスラムの伝統、環境、バイオミミクリー――「三位一体」のコンセプト

 アル・バハール・タワーズのコンセプトは、「イスラムの伝統建築」に加え、「サステイナブルな技術」と「バイオミミクリー的推論」という3点を統合する、というものだ。バイオミミクリーとは生物模倣のことを言い、生物の形態や機能をヒントに科学技術などに応用する手法。ミツバチの巣の構造を模したハニカム構造が有名である。

「イスラムの伝統建築」、「サステイナブルな技術」、「バイオミミクリー的推論」という3点を統合したコンセプト図(資料:Aedas)
「イスラムの伝統建築」、「サステイナブルな技術」、「バイオミミクリー的推論」という3点を統合したコンセプト図(資料:Aedas)

 このコンセプトを実現するために考え出されたのが、アル・バハール・タワーズの東西南面を覆う可動式の外装スクリーンである。以下にコンセプトをひとつずつ解説したい。