温泉や農業、男女のシンボルである「水(アクア)」と「火(イグニス)」を名前に掲げ、これをコンセプトとした複合温泉施設が三重県菰野町に誕生した。パティシエの辻口博啓氏、イタリアンシェフの奥田政行氏をキーマンに据え、単なる消費型のレジャー施設ではなく、クリエーティブな視点で食や環境をとらえることのできる施設を目指した。注目すべきは複数のアーティストやデザイナーによる多様な作品や製品を、施設内にふんだんに取り込んだ点だ。これらはコミュニケーションのきっかけとなり、湯上がりでリラックスした身体に新鮮な体験をもたらす。

RC造の外壁で囲ったレストラン棟。連続したアーチをコーナーまで切り欠くことで光と風を通し、また布のように透けるエキスパンドメタルスクリーンでポインテッドアーチを作って重ね合わせた。二重になったアーチの輪郭をずらすことで、柔らかく軽やかな印象に仕上げた(写真:ナカサアンドパートナーズ)
RC造の外壁で囲ったレストラン棟。連続したアーチをコーナーまで切り欠くことで光と風を通し、また布のように透けるエキスパンドメタルスクリーンでポインテッドアーチを作って重ね合わせた。二重になったアーチの輪郭をずらすことで、柔らかく軽やかな印象に仕上げた(写真:ナカサアンドパートナーズ)

エントランスロビーには、デザイナーの廣田尚子氏による水面の揺らぎを表現した、座の高さがまちまちな円形ベンチと、雨水や星をイメージしたペンダントライトを設えた。また日本建築における襖絵の位置付けで、壁一面をアーティストのミヤケマイ氏の作品とした。雲母引きに胡粉を載せた唐紙に、雲中供養菩薩像をモチーフにした鉄鋳物の作品を飾った(写真:ナカサアンドパートナーズ)
エントランスロビーには、デザイナーの廣田尚子氏による水面の揺らぎを表現した、座の高さがまちまちな円形ベンチと、雨水や星をイメージしたペンダントライトを設えた。また日本建築における襖絵の位置付けで、壁一面をアーティストのミヤケマイ氏の作品とした。雲母引きに胡粉を載せた唐紙に、雲中供養菩薩像をモチーフにした鉄鋳物の作品を飾った(写真:ナカサアンドパートナーズ)

地元の人々に愛された「片岡温泉」を移設。源泉100%掛け流しの湯を印象付けるため、大地からこんこんと湧き出るようなイメージで、内風呂の入口にヒノキ桶の掛け湯を用意した。外部には竹林を設け、光と風を通しながら、内風呂と露天風呂の借景とした(写真:ナカサアンドパートナーズ)
地元の人々に愛された「片岡温泉」を移設。源泉100%掛け流しの湯を印象付けるため、大地からこんこんと湧き出るようなイメージで、内風呂の入口にヒノキ桶の掛け湯を用意した。外部には竹林を設け、光と風を通しながら、内風呂と露天風呂の借景とした(写真:ナカサアンドパートナーズ)

店名:アクアイグニス

  • 業態:複合温泉施設
  • 所在地:三重県三重郡菰野町菰野4800-1
  • URL:http://aquaignis.jp/
  • 営業時間:片岡温泉6:00〜24:00 ほかは各店舗により異なる
  • 定休日:不定休(各店舗により異なる)
  • 設計:赤坂知也建築設計事務所ORGA-Lab
  • 協力:ミヤケマイ、諸泉茂、藤堂良門、牛島孝、ヒロタデザインスタジオ、トラフ建築設計事務所、KAICHI DESIGN、藤森泰司アトリエ、numabooks、安東陽子デザイン、堀岡建築研究所
  • 施工:三和建設
  • 床面積:4733m2
  • 客室数:宿泊棟17室、離れ宿4棟

杉江あこ=ライターケンプラッツ

 本記事は、有料メールマガジン「日経デザイン Pick’s インテリアデザイン‐商空間・超速便」vol.020(2013年1月9日配信)より抜粋。日経デザイン Pick’s インテリアデザイン‐商空間・超速便は、飲食店、物販店、各種サービス施設など、商空間デザインの最新情報をいち早くお届けします。商空間のデザインを熟知した写真家集団と専門ライターが、最新物件を撮影・取材。施設の基本コンセプトや業態としての新規性から、デザイン上重要となるディテールや素材、新技術に至るまで、丁寧かつ簡潔に解説します。配信申し込み、サンプル確認などは、下記サイトからどうぞ。

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