前回の記事では、古い団地を住みこなしている住まい手たちを紹介した。では、住まい手以外の一般の人は、古い団地にどのような印象を持つのだろうか。西東京市のひばりが丘団地で開催されたワークショップ「団地オモシロアイデア会議」から探ってみたい。ワークショップを主催した東京R不動産のメンバーに寄稿してもらった。 

  実際に古い団地を見て、人はどんな印象を持つのだろうか。「団地R不動産」では2012年5月、サイトから参加者を募り、西東京市のひばりが丘団地で「団地オモシロアイデア会議」を実施した。

午前中、まずは1959年竣工のひばりが丘団地を見学(写真左)。そして、住棟と住棟の間のスペースに巨大なピクニックシートを広げてランチ(写真右)。こうした公共的な空間が豊富にあるところも団地の魅力だ(写真:2点とも杉浦貴美子)
午前中、まずは1959年竣工のひばりが丘団地を見学(写真左)。そして、住棟と住棟の間のスペースに巨大なピクニックシートを広げてランチ(写真右)。こうした公共的な空間が豊富にあるところも団地の魅力だ(写真:2点とも杉浦貴美子)

  当日集まったのは25人。20代になったばかりの建築学生から、40代後半の社会の中堅的な人まで様々な人がやって来た。

  まず午前中は、1959年竣工のマンモス団地の敷地内をツアー。空いている室内も見学した。それからピクニックシート広げて皆でランチ。そして、いよいよ会議がスタート。「こんな団地があったら」というアイデアを出し合った。

  最初に、午前中の見学ツアーを経て感じた「団地のいいと思うところ」を書いてもらった(表1)。環境の良さ、子育て、いろいろな世代が住んでいることを「いいところ」と評価する回答が目立つ。子どもの頃によく団地で遊んでいた人は、その記憶が呼び覚まされたりもしたようだ。

表1●ワークショップ参加者の意見「団地のいいと思うところ」
子育てにぴったり
お年寄りとも仲良く、子どもをみてもらえる
木登りOK、的な?(したことがないことを子どもにさせてやりたい)
スーパーとか保育園がある
学校商店街が近くにある
団地の子は仲が良い
安いのが魅力
年配の人と話す機会
鬼ごっこ、楽しそう!
日当たりが良い
(敷地内の)道がまっすぐでないところが良い
ヤモリとか生き物が多い
小さい頃、団地に住んでる友達の子同士が仲良しで羨ましかった
建物が熟成している
敷地内にブランコがあるのにビックリ
団地だと子どもが住みやすそう
コンクリートより土や緑の感じがある
子どもにとって遊び場が多そう!
広くて緑がある
空地がひろく取れているところ
木々が多い
適度な荒れ感がいい
木の種類も多い
若い人と高齢者の接点があっていい
棟番号のサインが愛らしい
ジブリの映画のような懐かしさ
愛着が湧くディテール
団地内のコミュニティーがありそう
緑と古い建物が気持ちいい
保育園が同じで子どもたちに仲間意識が生まれる
草ボーボーでツタがはっているところ

  環境、安心、コミュニティー、ノスタルジー。今の日本で求められているものが、古い団地にはある。団地は再び時代にフィットし始めたのかもしれない。