2012年に完成し、世間で話題となったプロジェクトといえば、「東京駅」「スカイツリー」「ヒカリエ」の三つが挙がる。年末は、いずれのプロジェクトも、プロジェクションマッピングやライトアップなど“光の技”を駆使した演出が施され、街を彩った。年々、進化を遂げている光の演出を、“三大プロジェクト”にスポットを当て解説する。(ケンプラッツ)
ライトアップとプロジェクションマッピング、異なる表情で演出する東京駅丸の内駅舎
復元工事を経て2012年10月1日に開業した「東京駅丸の内駅舎」は、建築の姿を見せるライトアップと動きを与えるプロジェクションマッピングという二つの表情で夜景を彩る。
ライトアップでは、レンガや銅板など、光を当てる素材に合わせて光の色温度を変えた。加えて、地上から夜空に向かって暗くなる光のグラデーションをつくり出している。長く使われる駅舎にふさわしい「和やかな景色」を表現した。外壁とドーム内部の照明デザインは、ライティング プランナーズ アソシエーツの面出薫氏が手掛けた。
外壁のライトアップには、時間ごとに変化する4つの点灯シーンを設けた。日没から20時までの点灯状態を、20時以降は20分毎に部分的に消灯して、徐々に暗くしていく。
ドームの屋根を照らす照明は、シーンの変化に応じて、電球色から青色の光に切り替える。フルカラーのLED照明器具を使っているため、クリスマスにはピンク色に照らすなど、季節やイベントに合わせて色を変えられる。
ドームの屋根以外の場所には、単色のLED照明を用いた。照らす素材に合わせて、色温度の異なるLED照明器具を設置した。素材を引き立たせるために最適な色温度を選んでおり、化粧レンガには2300K(ケルビン)、花崗岩には3000K、銅板には緑青の色を想定して3500K、天然スレートには4200Kの光を当てた。
また、ホテル客室の窓明かりもライトアップの一部として活用した。客室内にカーテンを照らす照明を設置しており、室内の照明としても利用できる。客室に人が入る前は点灯しているが、宿泊客が部屋に入ると自由に消すことができるようにした。
ライティング プランナーズ アソシエーツでプロジェクトを担当した窪田麻里取締役 シニア アソシエートは、「外壁に合う光を検証する実験や照明器具の細かな調整に手間をかけたプロジェクトだった」と振り返る。主な実験だけで計14回、実施。「壁に凹凸があり、それぞれの場所に合わせて明るさのコントラストをつけた。ファサードについては、中央部:南北ドーム:南北端部:その他の部分=7:10:5:3となる割合をイメージして、照明器具の台数と調光率の調整で変化をつけた」と説明する。
さらに窪田氏は、「2009年のコンペ参加時は複数の光源を組み合わせて、カラーフィルターで色を調整する計画だった。しかし、設計を開始する翌10年までの間に、LED照明器具が急速に進化して、適切なLED照明器具が選べるようになっていた。そのため、光源を全てLEDに統一するように切り替えた」と話す。
ライトアップには三菱電機照明(製品供給時は三菱電機照明と三菱電機オスラムの2社。2012年10月に三菱電機照明に統合し、三菱電機照明とオスラム社との合弁関係は解消)のLED照明器具が使われた。また、同社のシステムでフルカラーと単色の投光器、ライン形状の間接照明器具を制御している。