多様な要素を鳥居が統合
伊東豊雄(伊東豊雄建築設計事務所代表)
菊竹さんの、ということではなく、世界の建築も含めて、自分の生涯のなかで最もインパクトのあった建築が東光園だ。
モダニズムが徹底した時代に、日本の鳥居のような形を直感的に考えた。日本的なモチーフを回顧的なものとしてではなく、近代建築に持ち込んだ。
東光園には、屋根の造形(シェル)、エレベーターと階段の複雑な取り付き方、上からつられている部屋と下から立ち上がっている部屋……と、いろいろな要素が混在している。それらが強い鳥居というモチーフによって、かろうじて統合されている。
大学4年の秋、菊竹事務所で働かせてもらうことが決まった後に、見に行った。工事は最終段階で、遠藤(勝勧)さんが現場を走り回っていた。遠藤さんはとても興奮した様子で、それも印象的だった。上からつっている部屋に案内してもらったら、本当に宙に浮いているみたいだった。
今でも、もうこんな建築はできないのでは、と思えるくらい力強い建築だ。(談)