アトリウムに日光を導く「サンスクープ」

 香港上海銀行ビルの1階部分には、風水の考え方を取り入れた完全にオープンな空間「プラザ」がある。プラザの上は10層分の吹き抜けのアトリウムになっており、できるだけ快適な場所となるよう細かな配慮がされている。

 日光を導くために、2基の反射板「サンスクープ」があり、1基はビルの外壁に、もう1基はアトリウムの頂部に取り付けられている。外部サンスクープは、各々24個の鏡をもつ20台のアルミ架台からなり、合計480個の鏡が取り付けられている。この架台はコンピューターで制御されたモーターによって作動し、1年中同じような太陽光線の入り方が可能なよう、太陽の動きを追跡する。1時間ごとに部分的に調整を行い、リニアアクチュエーターが鏡の位置を1分間に0.5mmの割合で制御する。太陽光は11階の上部で建物内部に導入され、次はアトリウムの天井全体を覆う内部サンスクープがプラザの床まで光を届ける。

 こうして、亜熱帯の光を取り入れた明るいアトリウムが完成し、そこに面する執務空間までも、グレアを抑えた光に包まれ、香港上海銀行という企業とこの建物をより魅力的な存在に見せている。

太陽光を反射するサンスクープ。香港上海銀行ビルの外壁にこのような巨大なサンスクープが設置されていることは意外と知られていないようだ(写真:Ian Lambot)
太陽光を反射するサンスクープ。香港上海銀行ビルの外壁にこのような巨大なサンスクープが設置されていることは意外と知られていないようだ(写真:Ian Lambot)

香港上海銀行ビルのアトリウム内部。シンプルかつ力強い構造、仕上げ、グレアの無い光などすべてが相まって、世界の指導的金融機関としての厳しい機能性や、この銀行の権威を表現している。上部には内部サンスクープが見える。照明と鏡が平行に並び、デザイン的に鏡を使ったのかと思われる洗練ぶりである(写真:Ian Lambot)
香港上海銀行ビルのアトリウム内部。シンプルかつ力強い構造、仕上げ、グレアの無い光などすべてが相まって、世界の指導的金融機関としての厳しい機能性や、この銀行の権威を表現している。上部には内部サンスクープが見える。照明と鏡が平行に並び、デザイン的に鏡を使ったのかと思われる洗練ぶりである(写真:Ian Lambot)