米国発の建築の環境性能評価指標であるLEED(リード)が日本でも話題に上ることが増えた。2009年の日本初のLEED認証プロジェクト(シティグループ 天王洲アイル コールセンター)をはじめ19件が認証を受け、2011年は日本初のプラチナ認証(飯野海運本社オフィス)が誕生した。日本でのLEED登録プロジェクト数は、認証済みの19件を含めて59件。プロジェクト登録をしてLEED認証取得予定の意思を表明し、その後に申請書類等を提出、認証取得という流れだ。
 LEEDの登録プロジェクト数は世界中で約4万6000件。ほとんどは米国のプロジェクトだが、すでに約130カ国で導入され、中国では約900件、インドでは約300件が登録されている。ただし、プラチナ認証を受けたプロジェクトは世界中を見ても約700件と、2%にも及ばない(2012年4月末時点)。

 助成金の仕組みなどがある米国本国と異なり、日本ではLEED認証取得によるインセンティブはあまり無いのが実情ではある。しかし、多くの人が省エネルギーや環境配慮を意識したより良い建物を作ろうとしており、その努力を宣言する場として、LEEDが建築の環境性能評価指標のグローバルスタンダード化しているのは、上記の数値からも明らかではないだろうか。

 LEEDは約70の評価項目から成り、原則110点満点中、何点を取れたかによって、上から、プラチナ、ゴールド、シルバー、サーティファイド(認証)、認証不可、の5ランクで評価される。
 環境に良い建物というと、緑の多い水のきれいな地方の方が有利と思われているかもしれないが、LEEDでは車利用を避けるため、公共交通の発達した都市部の方が有利なことが多い。同じ理由で、駐車場は無い方が評価される。また、感覚的に土壌汚染された土地は、環境配慮型建築の建設地には適さないと思われるかもしれないが、LEEDは未開発地の乱開発を避ける目的で、汚染土壌を行政の指示に従って処理し、再利用することを勧めている。

 「高性能の機器を導入するなど、コストがかかるのでしょう?」と聞かれることが多いが必ずしもそういうわけではない。機器の性能だけに頼らず、建築の外装等の工夫によって快適な環境を創り出している事例もある。ロンドンのロープメーカープレイスだ。

 21階、延べ床面積8万m2を超えるロープメーカー・プレイスは、“シティ”と呼ばれるロンドン中心部の金融街に位置し、敷地、景観、コストの制約をクリアして建てられている。ロンドンのオフィスビルで初めてLEEDプラチナ認証を取得した。

ロンドンの中心部に建つロープメーカー・プレイス。写真左下の段状のビルである。高さ110mを超えるとセント・ポール寺院の塔の間からこの建物が見えてしまうことから、自主的に高さを110mに抑えた。地中熱利用ヒートポンプの可能性も検討したが、敷地面積が小さくあまり効果がないため却下した(写真:Cityscape)

ロープメーカー・プレイスの外観。設計はアラップ・アソシエイツ。2010年に竣工した(写真:Peter Cook)