マッキム・ミード・アンド・ホワイトの設計した建物が点在し、数ブロック行けばハーレムという、ニューヨーク・マンハッタンの120thストリートとブロードウェイの交差点に、コロンビア大学の科学分野の研究棟が完成した。

コロンビア大学の科学分野の研究棟の外観。シンプルなブレース構造に見えるが、数々の制約条件をクリアするために生まれた架構である(写真:アラップ)
コロンビア大学の科学分野の研究棟の外観。シンプルなブレース構造に見えるが、数々の制約条件をクリアするために生まれた架構である(写真:アラップ)

 この敷地には既存の体育館があり、大切なバスケットボール・シーズンを工事のために棒に振るわけにもいかず、体育館をまたいで新築の研究棟を建設することになった。そのため、既存体育館の直上に1層分のトラス梁を渡し、それを両側の14階建てコア部分からV字型の材で吊って上部数フロアを支える構造を採用している。

 当初、このトラス梁は体育館の屋根から数cm浮かせ、この梁にかかる全ての荷重を吊り材を介してコア部分が負担する計画としていた。しかし全体のバランスを考慮し、鉛直荷重の一部を体育館にも負わせる計画とした。トラス梁にスライド・ベアリングを設置することで、新しい研究棟に作用する地震時の水平力が、既存体育館に影響しない工夫をしている。

 このような吊り構造や鉛直力の分散負担などによって、構造部材の小さい広々とした内部空間が確保でき、一部はカフェと図書室として使用することになった。これらは大きなガラスのファサードを持ち、都市に対して大学内の様子を見せる結節点として機能している。

 結果として、この建物は様々なものをつないだ。1970年代にできた体育館と1920年代にできた人文学科棟という異なる耐震基準の構造物を。それから、近隣住民にとっては謎の多い大学の研究室とこの地域とを。

 建築評論家ニコライ・オロソフ氏はニューヨーク・タイムズ紙において、「隔絶された大学キャンパスとその壁の向こう側の地域社会との間にある隔たりを埋めたい、という大学の願望を具現化した、輝かしい実例」として、この成果を称賛している。

コロンビア大学の科学分野の研究棟の内部。透明感があり、近隣との視覚的なつながりが親近感を与えているようだ(写真:アラップ)
コロンビア大学の科学分野の研究棟の内部。透明感があり、近隣との視覚的なつながりが親近感を与えているようだ(写真:アラップ)