バルセロナで待ち受けていた不幸

―――ガウディの生まれ故郷はどこですか?

フェリン ガウディは16歳でバルセロナへ上京するまで、レウスという街で育ちました。でも、自分の父の生まれ故郷であるリウドームスを「心の中の故郷だ」とも言っています。レウスもリウドームスも同じタラゴナ県にあるので「タラゴナ生まれ」だと言っておけば間違いないでしょう。

リウドームスにあるガウディの生家(撮影:川口忠信)
リウドームスにあるガウディの生家(撮影:川口忠信)

レウスにあるガウディが生まれ育った家(撮影:川口忠信)
レウスにあるガウディが生まれ育った家(撮影:川口忠信)

―――ガウディ一家はどんな家族だったのでしょうか?

フェリン ガウディの父親は職人さんでした。お酒の蒸溜器とか鍋や食器を作る銅板職人。子供は5人授かったけれど、幼いうちに2人を亡くしました。末っ子のガウディが産まれたときにいたのは、一番上の姉とすぐ上の兄だけです。その意味では、兄弟姉妹は3人だったと言えます。

 ガウディの父親は息子たちを大学に行かせたくて、バルセロナに送り出しました。兄のフランセスクはとても優秀で、医学部に入って医師になりました。

―――ガウディ兄弟はバルセロナではどんな暮らしをしていたんですか?

フェリン 田舎から仕送りを受けながら、兄と二人で暮らしていました。数年たって兄のほうは大学を卒業して医師になるのですが、その直後に突然、亡くなってしまったのです。不幸は続くもので、そのわずか2カ月後に、お母さんまで亡くなりました。

ガウディの兄、フランセスク・ガウディの大学卒業時の記念写真(資料:王立ガウディ記念講座)
ガウディの兄、フランセスク・ガウディの大学卒業時の記念写真(資料:王立ガウディ記念講座)

―――ガウディは落胆したでしょうね?

フェリン 頼りにしていた優秀な兄と、愛する母親を次々と亡くしのですから、ガウディはとても悲しんだと思います。鬱病っぽくなったという話も聞いていますが、ガウディは自分の生涯について何も書き残していません。関係者の証言や記録しか残っていないので、はっきりしたことはわかりません。母の死によって愛に対する扉を閉ざしたのかもしれません。