清水建設の技術者に勇気付けられる

 津波以外にも、関東まで及んだ液状化被害、福島原発事故による放射能被害など、かつての震災であまり経験したことがない被害に建設界は直面した。いずれも、一人ひとりの技術者では対処が難しい課題だ。無力感に立ち尽くす実務者も少なくなかった。そんななか、12月に掲載した1本の記事が注目を集めた。5位に入った「『原発カバー工事』完遂への道を開いた技術者」だ。

 人が近付けないほど放射能汚染がひどい原発建屋をいかにして覆ったかを、清水建設の一人の技術者を通して描いた。過去にない特殊な状況に常識外の発想で挑み、プロジェクトを見事完遂に導く。そんな技術者の姿に勇気付けられた読者は建設界に限らない。日経電子版やあちこちのTwitter(ツイッター)などでも取り上げられ、アクセス数を伸ばした。

「『原発カバー工事』完遂への道を開いた技術者」では、建屋カバー計画の立案から竣工までを担った清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長の奮闘を描いた(写真:日経アーキテクチュア)
「『原発カバー工事』完遂への道を開いた技術者」では、建屋カバー計画の立案から竣工までを担った清水建設生産技術本部の印藤正裕本部長の奮闘を描いた(写真:日経アーキテクチュア)

 このほか、「免震の鉛ダンパーに亀裂、宮城のホテルで」(19位)、「釜石市の『津波避難ビル』に住民は逃げていた」(27位)、「学者もどよめく柱状図、浦安市舞浜の軟弱地盤」(28位)など、専門媒体ならではの視点で、震災の問題を深く掘り下げた記事がランキングの上位に入った。

 被災地の復興や各地の防災対策の見直しが本格化するのはこれからだ。2012年も、この震災に向き合っていかなければならない。一人ひとりの実務者が目の前の課題に取り組む中で、少しずつ震災に強い建物や街へ変えていく。その積み重ねが、震災の教訓を生かした社会の構築につながることを期待したい。

アクセス数上位50

  • 対象記事:2010年12月15日~2011年12月14日に公開した記事
  • 計測期間:2010年12月15日~2011年12月14日
  • 計測方法:ケンプラッツの記事管理システムで計測

1~10位

1位:あの建築はどうなった(1)、仙台市中心部
2位:埋め立て時期で明暗?千葉・浦安の液状化
3位:東北新幹線の高架橋柱は「曲げせん断破壊」か
4位:空撮映像、激震と津波に襲われた被災地
5位:「原発カバー工事」完遂への道を開いた技術者
6位:仙台駅:新幹線ホームの天井崩落で機能喪失
7位:震度5弱で倒壊した東京・町田の大型店舗の斜路
8位:RC建物は津波に強かった
9位:千葉県旭市でも甚大な津波被害
10位:仙台港1:アウトレットから間一髪の脱出