白色LEDがこのまま進化すれば、次世代照明の光源は白色LEDだけで済むのか・・・。そう簡単には言い切れない。白色LEDは点光源であり、照明に使うような十分な明るさを得ようとすると、複数個を並べて面を作らねばならない。その一方で、点光源を追求しようとすれば、実は輝度はHIDランプに及ばない。こうした面光源、点光源を追求すると、白色LED以外の光源の重要性が浮かび上がってくる。「Green Deviceフォーラム2010」では、こうした視点からの講演があった。

 面光源の観点からは、パナソニック電工の菰田卓哉氏が白色有機EL照明の動向を紹介した。同氏は線光源といえる蛍光管、点光源の白色LEDと並び、面光源として白色有機ELが特徴ある照明の担い手になるとする。同社は2011年に白色有機ELパネルのサンプル出荷を始める予定であり、用途は当初が特殊照明、続いて店舗照明、2014年以降には一般照明に広まるとみる。

 白色LEDに比べると白色有機ELは現段階で発光効率は劣るものの、将来的には同等になるとした。白色LEDの発光効率は200lm/W程度でほぼ落ち着く可能性があり、その一方で効率が高いりん光系有機EL材料の開発が進むことで白色有機ELが白色LEDとの差を急速に縮まるとみる。同社が加わるNEDOのプロジェクトの成果が反映されれば、2014年ころに発光効率130lm/Wの製品も夢ではないとした。

 最近の同社の取り組みとして、「二層マルチユニット構造有機EL素子」を紹介した。これは、赤色と緑色のりん光発光層(米Universal Display Corp.(UDC)と新日鐵化学製)と青色の蛍光発光層(出光興産製)を縦方向に重ねたもの。縦積みにすることでRGBの3種類の色がよく混ざり、白色有機ELパネルを見る角度を変えても白色光の色合いがほとんど変わらないとする。講演では、色温度4600Kと3000K(いずれもRaは95)の試作パネルを点灯させ、来場者に角度依存性がほとんど見えないことをアピールしていた。なお、青色有機EL層に蛍光発光材料を用いたのは、現段階で実用的な青色りん光発光材料がないためとする。

半導体レーザを使い、輝度はHIDの約2.5倍に

 究極の点光源を目指した取り組みを解説したのが、日亜化学工業の長濱慎一氏である。同氏は、輝度が270cd/mm2と、HID ランプの2.5倍程度もある固体光源を紹介した。白色LEDと比べての1ケタ近く高い。レーザ・プロジェクタの青色光源に使う青色半導体レーザと蛍光体材料を組み合わせたものである。直径0.65mmから250lmを得る(電流1.2A、電圧4.6V)。画像認識用のスポット光源や、医療および産業用途の特殊光源への応用を想定する。「点光源をとことん追求した」(同氏)というこの白色光源は、簡単なレンズで集光できることも特徴である。実際に講演では白色光源と外付けレンズを組み合わせ、会場の隅々まで明るく照らせることを実演した。

 白色光源の構造は、青色半導体レーザのCANパッケージの上にレンズを載せ、これら全体を別のCANパッケージで覆うというもの。全体を覆う CANパッケージの上面の中心には光を取り出せる穴が開いており、そこに蛍光体を混ぜたバインダを埋め込んでいる。この穴の直径が0.65mmある。青色レーザ光はパッケージ内のレンズで集光され、それを蛍光体部に当てると蛍光体の外部に白色光が出射される。

 レーザ光源といえば、寿命が短いのではないかとの見方も強い。開発した白色光源はケース温度25℃の条件で輝度半減寿命が平均2万時間である。寿命は主に、パッケージ内に設けた反射層が劣化し、反射率が落ちることで決まるという。青色半導体レーザはケース温度50℃で寿命4万時間あるので、反射層を改良すれば輝度半減寿命を3万時間以上に延ばせるとみる。白色光源のパッケージおよびパッケージ内のレンズ、蛍光体材料と同材料を混ぜ合わせるバインダはすべて、無機材料である。強い青色レーザ光が当たるので、樹脂材料を用いると劣化が激しくなってしまうためだ。なお、レーザ光源はLEDよりも高価という印象もあるが、青色半導体レーザはプロジェクタ向けのものを活用し、しかもBlu-rayレコーダなどに用いる青紫色半導体レーザ素子を量産する半導体製造技術を適用できるので、レーザ素子自体は量産さえ始まれば安価にできる素地はあるとする。

 輝度は極めて高いが、発光効率はまだ45lm/Wである。100lm/Wを超えてきた白色LEDに比べると劣る。長濱氏によれば、これまでは効率を犠牲にしてまで輝度の高さを追求しており、効率を上げようとすれば手段はあるという。今回、蛍光体を埋め込んだ部分の直径を0.65mmにしたが、パッケージ内には外に出ない光があるという。HIDの2.5倍まで求めない用途であれば、蛍光体を設ける部分の直径を広げる手段が採れる。こうすることで無駄になってきた光もパッケージ外に取り出せるようにでき、効率を高められる。