東京都が建物の温暖化対策を着々と強化している。環境配慮ビルの評価指標として、都が重視しているのはどのような項目か。東京都環境局総量削減課の宮沢浩司・排出量取引担当課長に聞いた。(ケンプラッツ編集)



東京都環境局総量削減課の宮沢浩司・排出量取引担当課長(写真:ケンプラッツ)
東京都環境局総量削減課の宮沢浩司・排出量取引担当課長(写真:ケンプラッツ)

――2010年4月から温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引の制度、いわゆるキャップ・アンド・トレード制度が始まり、建物の環境配慮への注目が高まっている。その他の制度を含めて、都はどのような制度を目指しているのか。

 建物が生まれる段階から運用段階まで、一貫して省エネ対策に取り組めるように制度を整えている。

 具体的には、まず、建築物環境計画書制度で建物の元々の環境性能を高める努力をしてもらう。そして建物が使われ始めたら、排出総量削減義務に従って、設備機器が最も効率良く運転されるよう運用してもらう。季節変動や建物使用時間などに応じた、しっかりしたチューニングが必要だ。これによって、相当のエネルギー削減になると考えている。

 よく例として話すのが都庁舎だ。1991年に竣工し、これまでの18年間でエネルギー消費量を3割カットしている。それでも、今後5年間で削減義務率6%がかかる。設備を更新せず、自らの運用の工夫で実現しなければならない。設備関連の部署からは「6%の削減はできない」という声もあった。だが、もう一度、ぎりぎりまで検討するとできることが分かった。

 運用段階の排出量削減には、建物の設計者と運用者のコミュニケーションが大事だ。設計側が考えている最適運転の条件を、運用側がしっかり認識した上で設備を運転するのが効率的だ。しかも定期的にメンテナンスしなければならない。

 設計時に省エネという観点でオーバースペックにならないよう設計することも、今後、大事な視点になりそうだ。設計と運用のコミュニケーションがこれまで以上に重要になる。設備の更新時期を見据えた設備投資の計画が必要になる。

――建物の環境性能を評価する上で、都が重要と考える指標は何か。

 運用段階のエネルギー消費量と、それを換算したCO2に代表される温室効果ガス排出量だ。キャップ・アンド・トレードではそう見ている。

 一方、設計段階では、建築物環境計画書制度でさまざまな側面から建物そのものの性能を評価している。なかでも、断熱性能を表す「PAL(パル)」と、設備の省エネ効率を表す「ERR(イーアールアール)」が重要になる。

建物の環境性能を表す四つの指標 (資料:ケンプラッツ)
建物の環境性能を表す四つの指標 (資料:ケンプラッツ)