国土交通省が設置した「建築基準法の見直しに関する検討会」(座長:深尾精一・首都大学東京教授)が3月8日、初会合を開き、建築基準法の再改正に向けた検討に着手した。構造計算適合性判定(適判)制度の対象範囲、確認審査の法定期間、違反した際の厳罰化などのテーマについて議論する。会合は全9回を予定。テーマ別に意見交換を重ね、今夏ごろをめどに意見を集約する方針だ。

「建築基準法の見直しに関する検討会」であいさつする馬淵澄夫副大臣(写真:ケンプラッツ)
「建築基準法の見直しに関する検討会」であいさつする馬淵澄夫副大臣(写真:ケンプラッツ)

 冒頭、馬淵澄夫副大臣は「建物に対する安心・安全の問題について、国土交通行政として私どもが、しっかりとした法整備と併せて、制度を提示していかなければならないと考えている。建築基準法の改正のみならず、今後の建築行政全般にかかわる法制度の整備も踏まえ、この場での議論が一助となることをお願いしたい」とあいさつした。

 建築基準法は、2005年11月に発覚した構造計算書偽造事件をきっかけに改正。建築確認の厳格化を柱とする内容で、07年6月に施行した。だが、住宅着工戸数が急減。“建基法不況”を招いた。国交省は、建築確認の円滑化策を相次いで打ち出し、事態の沈静化に追われることになった。

 政権交代後、前原誠司国交相は、実務環境の改善と景気対策の視点から、建築基準法の見直しを指示。国交省は10年1月、確認期間の短縮や提出書類の簡素化など建築確認手続きの運用改善策を公表した。検討会では、運用改善での対応が難しい事項について対策を協議する。

初会合での委員の主な発言

 検討会は25人の委員で構成する。学識経験者、設計や施工・生産、審査など建築関係者に加え、消費者・保険、ユーザー関係者らが参加している。8日の初会合では、国交省がこれまでの検討経過や、検討会の進め方について説明。適判制度の対象範囲、確認審査の法定期間、厳罰化の3つのテーマを中心に議論することを決めた。

 委員からは、それぞれの立場から設定テーマに関する意見が出された。

 「既存建築物の処置や大臣認定の手続きなど、姉歯問題で改正された内容以外のことも議論するべきではないか。国交省の成長戦略会議で建築基準法の改正が一つの成長戦略として議論されるべきだと言われており、どう絡んでいくのか。整理が必要だ」(プランテック総合計画所長の来海忠男委員)

 「60年経ったこの法律は使いものにならないことを明確にすべきだ。建築士の権限と責任とは何か。行政が確認と検査でかかわる責任と権限は何か。どっちがどういう責任を取るのかを明確にしないと法改正は進まない。建築はユーザーである注文者のものなので、その人のためにどのように役立つ法律をつくるかが前提だ」(希望社会長の桑原耕司委員)

 「変更の取り扱い、建築のストックの取り扱いが非常に重要だ。ストックの問題は、クリアしないと工場を海外展開してしまう方向に走らざるを得ないぐらいの危機感がある」(パナソニック本社施設管財グループ立地・建設チームリーダーの橋爪啓文委員)

 「欠陥住宅の被害者は悲惨。確認審査をもし緩めるなら慎重に考えてほしい。中間検査はきちんとチェックされていない実態がある。設計段階はもちろんだが、施工段階でも法に適合していることを確実に点検して、違反建築を絶対に建たせないことが必要だ」(弁護士の谷合周三委員)