民主党がマニフェスト(政権公約)で打ち出した建築基準法の見直しについて、馬淵澄夫国土交通副大臣は1月12日、「2011年度の法改正を視野に置きながら、2010年度は建築基準法の運用を改善する」と述べ、1月18日召集の通常国会での改正法案の提出を見送る考えを明らかにした。今夏前にも政省令、告示の改正などによって運用を見直す方針だ。日経アーキテクチュア、ケンプラッツの共同インタビューに答えた。

1月12日午前、日経アーキテクチュアとケンプラッツの共同インタビューに答える馬淵澄夫・国土交通副大臣(写真:宮原 一郎)
1月12日午前、日経アーキテクチュアとケンプラッツの共同インタビューに答える馬淵澄夫・国土交通副大臣(写真:宮原 一郎)

 建築基準法見直しは、(1)建築確認日数の短縮(2)提出資料の簡素化(3)違反があった場合の厳罰化――が柱。現行の建築確認制度をベースに、手続きに関する規制を緩和する。前原誠司国交相は就任直後、改正法案を通常国会に提出する前提での検討を馬淵副大臣に指示。国交省は、昨年末までに建築設計や施工、不動産、消費者など約20の関係団体にヒアリングを実施し、問題点の洗い出しを進めてきた。

 「ヒアリングなども併せながら検討項目を整理していく中で、運用改善で速やかに対応できると判断した。前回改正では、現場の声を聞かずに混乱を招き、行政に対する不信感を募らせた。同じ轍を踏むわけにはいかない。ヒアリングを引き続き行って、皆さんの意見を集約、整理して、提示しながら法改正したい。今回の(通常国会での)法改正は見送った」と、馬淵副大臣は説明する。

「迅速化」「簡素化」「厳罰化」の具体策

 国交省は現在、運用改善策の詳細について詰めの作業を進めている。馬淵副大臣は以下のような対策を検討していることを明らかにした。

 確認審査の迅速化では、確認審査等に関する指針を定める告示を改正する。チェックリストも大幅に簡素化する。さらに、確認審査と構造計算適合性判定の並行審査を可能にする方向だ。「軽微な変更」と扱われる計画の変更の対象を、構造に影響しない一定程度の範囲で拡大する。大臣認定に要する期間も、審査体制を充実させるなどで短縮する方針だ。

 審査期間の数値目標も設定する考えだ。「確認検査機関ごとに確認手続きに要する日数の目標を設定し、実績を公表していく。現行でもかなり日数は縮まってきているが、個別具体的な実態を公表する仕組みをつくることで縮めていけるのではないか」(馬淵副大臣)。

 一方、提出資料の簡素化では、構造計算概要書を廃止する方針だ。さらに、設備関係図書を中心に申請図書を簡素化する。大臣認定のデータベース化を進め、大臣認定書の写しの添付省略を徹底する。4号特例は当面継続する。さらに、確認申請と住宅性能評価、瑕疵担保保険にかかわる申請手続きのワンストップ化を進め、共通の書類を共用化することも検討している。

 違反があった場合の罰則強化については、慎重な姿勢だ。「罰則を強化するといっても、チェックをしないと意味がない」(馬淵副大臣)として、まずは違反建築物を把握するための広範なサンプルチェックを強化していく考えだ。

 建築基準法の運用改善は、周知期間を取った上で夏前までに実施する方針だ。「できるだけ早くとは思っている。周知徹底しないと混乱を招くだけなので、そこは避けたい。住宅瑕疵担保履行法のパンフレットのようなイメージで、消費者にまで伝わる周知方法を考えるようにお願いしている」と、馬淵副大臣は語る。