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デザインイベント出展作に見るLED照明の試み

2009/12/01

日経アーキテクチュア


毎年10月から11月にかけて、東京都内ではデザインにまつわる様々なイベントが開催される。特に今年は、LEDを採用したデザインの提案が目立った。代表的なイベントである「デザインタイド」(10月30日~11月3日開催)に出展された事例を紹介する。

生活に融け込む明かりとしてのLED


 白熱灯や蛍光灯に替わる光源として、LEDの認知度が高まり、商品化が急速に進んでいる。慣れ親しんだ既存の光源と比較すると、指向性が強いなどの性質を持つ。素子が小さく、低出力のものであれば、あまり熱が高くならない。そうした特徴を生かし、照明器具などの試作にLEDを採用するデザイナーが複数いた。これまでの「明かり」の延長で、器具に用いる素材を選び、デザイン性を追求する例、あるいは機能を付け加えて照明のあり方そのものを拡張する例などを見ることができた。

ホルスト・ベッカー「Ply」
 剣道の防具などに使う高強度の紙でつくったフロアスタンドである。ハンドメイドでつくることのできるシンプルで美しいデザインを検討するうちに、紙という素材とLEDという光源の組み合わせに行き着いた。16枚の紙を合板のように張り合わせ、型に沿って接着させることにより、ボディの曲線を生み出した。シェード部については接着をせずにたわみをつくり、一枚ごとに異なる長さの切り込みを入れている。通常よりも色温度の低いLEDを使用し、柔らかく温かみのある明かりをつくっている。
・ホルスト・ベッカー=1971年生まれ。家具、インテリアにとどまらず、建築、ステージデザインなど様々な分野で活動する。

ホルスト・ベッカー「Ply」。ボディは高強度の紙16枚からなる(写真:ホルスト・ベッカー)

ホルスト・ベッカー「Ply」。LEDの光が積層する紙を通り、柔らかみを持つ明かりとなる(写真:ホルスト・ベッカー)


mute「Apollo」
 正円のプレートを丸めただけのシンプルな形のランプシェードを持つLED照明である。照明器具にはこれまであまり使われることのなかったアルミ、革、フエルトでランプシェードを制作している。簡単に交換できるので、例えばレストランであれば、時間帯、季節などでシェードを取り替えて手軽に空間の印象を変えることができる。和紙など様々な素材によるバリエーションも可能となる。
・mute=2008年、イトウケンジとウミノタカヒロにより結成。http://www.mu-te.com

mute「Apollo」。左から、アルミ、革、フエルトのシェード(写真:mute)


印デザイン「pool」
 これまで、蛍光灯を使ったユニークな照明器具を手掛けてきた印デザインによるLED照明である。蛍光灯の光を強く意識しつつ、LEDを用いるデザインとなっている。蛍光灯と同等の太さでつくった3本の発光部には、蛍光灯のような均一な光の美しさと明るさを再現するために、合計60個もの高輝度LEDを配している。各部のつなぎ目をつくらないことにより、台座から支柱、3本の発光部に至る流動的な形状を実現した。
・印デザイン=2003年、池内昭仁と石井保幸により設立。ハンドメイドによるプロダクト制作を行なう。http://www.indesign.jp/

印デザイン「pool」。蛍光灯の光を強く意識した設計となっている(写真:小野 正志)


ReVi「Hanger Tree」
 名前の通り、木をイメージしてデザインしたコートハンガーである。枝に当たる部分の着脱ができ、LED照明を仕込んだ枝を組み込むことも想定している。様々に組み合わせることにより、コートハンガーにとどまらない使い方が可能となる。ポールは再生紙でつくり、表面を光触媒でコーティングしている。
・ReVi=TRENDGATEの扱う家具ブランド。石黒猛によるデザイン。http://trendgate.co.jp/revi/

ReVi「Hanger Tree」。自由にパーツを着脱できるコートハンガー。LED照明を組み込むことも可能(写真:TRENDGATE)


one tenth「Perfume」
 シンプルでコンパクトな形状ながら、アロマディフューザーと照明の2つの機能を持つ。中心の穴に差したアロマオイルを超音波で蒸発させ、香りを立てている。11個のLEDを光源とし、表面に張った水に波紋を発生させることにより、天井には水面の揺らぎが動きとなって広がる。会話や音楽など周囲の音を拾い、それらを反応させることで波紋をつくり出しており、音源の違いによって水面の動きが変化する。
・one tenth=2008年、冨吉険人と今水誠らが結成。http://www.onetenth1-10.com/

one tenth「Perfume」。アロマディフューザーと、水に揺らぐ照明の2つの機能を併せ持つ(写真:one tenth)


山本侑樹「Spica」
 LED照明によって室内でのくつろぎの時間をどう演出するのか、という問いから生まれた器具である。照明とスピーカーを組み合わせ、スピーカーを通じて出る音(物理的な空気の振動)によって液体を跳ね上げ、光に変化を与えることで音を視覚化する。音楽のほか、音に合わせて跳ね上がる水の動き、そして天井に反映する揺らぐ光の3つで空間を演出する。筒状のボディは、スピーカー、砲弾型LEDを100個使用した照明部分、そして液体などを入れるケースからなる。ケース上部はふた兼レンズであり、レンズの焦点は2mから2m50cmほどで、ローテーブルに置いたときにちょうど天井の高さとなるようにしている。
・山本侑樹=1985年生まれ。インハウスのプロダクトデザイナーとして活動する傍ら、個人でも制作を行なう。http://yy-design.net/

山本侑樹「Spica」。スピーカーの音によって跳ね上がる水が照明に変化を与える(写真:山本侑樹)

山本侑樹「Spica」。天井に映る光(写真:境洋人)

境 洋人=ライター日経アーキテクチュア