東芝 取締役 代表執行役副社長の室町 正志氏
東芝 取締役 代表執行役副社長の室町 正志氏

 国内大手電機メーカーが相次いで製品を市場投入し、本格的な普及が見えてきたLED照明。この分野で2015年までに売上高3500億円を目指すと気炎を上げているのが、照明機器の老舗でもある東芝だ。「Green Device 2009」の会場を訪れた、同社取締役代表執行役副社長の室町正志氏にその展望を聞いた。

――LED照明事業で勝ち抜くためには、どのような戦略が必要でしょうか。(東芝が世界第3位の)半導体では、微細化技術での先行と投資規模がカギを握るわけですが。

 LED照明は、半導体とはかなり性質の違う事業になると思います。技術による差異化はもちろん重要ですが、用途やマーケットの開拓が大きなウェイトを占めてきます。そのため、自社の手が届かない領域では、適切なパートナを見つけていく必要があるでしょうね。特に、欧米や中国での市場開拓を重視しており、ここを獲るための戦略を考えていきます。既存の照明機器では既に広い販売チャネルを築いており、これはLED照明事業でも強みになりますよ。

――半導体事業とのシナジーはあまり見込めないのでしょうか。

 そんなことはありません。半導体で得た知見を十分に生かしていける分野です。現時点で、われわれはLED照明については、チップではなくモジュールに比重を置いていますが、ここでは半導体の後工程(実装)と技術的に共通する部分が多くあります。LEDチップについては少し出遅れた感もありますが、今後は積極的に取り組み、事業に取り込んでいく考えです。

――海外メーカーを含めて、非常に競争が激しい製品分野になりそうです。

 韓国勢などもかなり積極的ですし、相当厳しい競争が待っていると覚悟しています。ここ2~3年の取り組みが勝敗を分けるでしょう。LED照明は寿命が長いだけに、いったん市場を競合メーカーに獲られてしまうと、取り返すチャンスがなかなか訪れないですからね。この分野で、われわれはなんとしてもトップ・ベンダーの座を築きたい。そのために、2015年までに1000億円の経営資源を投入していきます。この金額でも、半導体の設備投資に比べればはるかに小さい規模で済みます。
 人材の点からも、例えば、半導体技術者をLED照明などの成長分野に振り向ける施策を検討する必要があるかもしれません。われわれはこの分野では新規参入組であり、ある意味で身軽な立場にあります。そこを優位な点と考えて、先行するメーカーに対抗していきます。

――LED照明の普及に向けて、メーカーに求められる取り組みはどのようなことでしょうか。

 LED照明のメリットを有効に消費者に伝えていくことが重要です。現状では、LED照明はNAND型フラッシュ・メモリーのように毎年価格が半減していくようなペースで価格が下がっているわけではありません。それでも、LED照明による省エネ効果はとても大きい。例えば、太陽電池と比べても、費用対効果でみた場合の省エネの恩恵ではLED照明がおそらく勝りますからね。