10月28日~30日、日経BP社は低炭素社会の実現に向け、技術展とフォーラムで構成する「Green Device(グリーン・デバイス)2009」をパシフィコ横浜(横浜市西区みなとみらい)で開催する。特別企画として「新照明導入ソリューションゾーン」を設けており、会場内のメーンシアターでは連日、関連の講演を開催する(当日受付制、無料)。各日の講演を行うのは、照明デザイナーの岡安泉氏(岡安泉照明設計事務所)と落合勉氏(M&Oデザイン事務所)、設備設計者の滝澤総氏(日建設計)。環境に配慮した照明計画を実践する3人の講演趣旨を以下に紹介する。

 環境配慮型の電子デバイス(グリーン・デバイス)をテーマとする本技術展では、LEDや有機ELなどの新照明分野、太陽電池などの新エネルギー分野、二次電池などの省エネルギー分野を扱っており、デバイス、部品・材料、製造装置などの各メーカーが出展する。「新照明導入ソリューションゾーン」には特に、新光源のLED照明や有機EL照明を扱うメーカーなどが出展している。新光源に関心を持つ住宅・建築や建材・設備の関係者、その導入を検討中の商業施設等関係者をはじめ、新照明を支える技術者なども対象としている企画だ。


岡安泉照明設計事務所代表の岡安泉氏(写真:吉田 明弘)

10月28日(水) 13:00~13:40

「実例に学ぶ 照明デザインと新光源」

岡安 泉 氏(照明デザイナー、岡安泉照明設計事務所代表)

[講演内容]

 照明デザイナーの岡安泉氏は、「白い教会」(青木淳建築計画事務所)、「ナミックステクノコア」(山本理顕設計工場)、台北市立美術館「TOYO ITO:GENERATIVE ORDER」(伊東豊雄建築設計事務所)、ミラノトリエンナーレ2008「casa umbrella」(隈研吾建築都市設計事務所)などの多くのプロジェクトで照明計画や器具設計を手掛けている。配光計画だけにとどまらずエンジニアリングの領域に踏み込む照明デザイナーとして、岡安氏の活躍の場は広がっている。建築家との協働で実践した独自の照明手法を交え、LEDなどの新光源と従来光源の特徴を解説する。

 「LEDについては使い方を間違えると、まぶしさを感じさせるなどの問題が生じるが、逆にうまく使えば発光面積が小さいという長所を生かすことができる」と岡安氏は言う。講演では、主要光源を効率の点から比較し、白熱灯、蛍光灯、放電灯(セラミックメタルハライドランプ)、LEDのそれぞれの特徴を生かした照明デザインの実例を語る。

岡安 泉
照明デザイナー、岡安泉照明設計事務所代表
1972年神奈川県生まれ。97年日本大学農獣医学部農業工学科を卒業。生物系特定産業技術研究推進機構を経て、2000年にITL co.,LTD 入社。02年からsuper robotに参加し、05年に現事務所を設立。上記以外に、「Y150はじまりの森」(みかんぐみ)、店舗「彩季」(橋本夕紀夫デザインスタジオ)など多数のプロジェクトにかかわる。


「Y150はじまりの森」(設計:みかんぐみ)。岡安氏が全体照明計画を担当した(写真:柳生 貴也)
「Y150はじまりの森」(設計:みかんぐみ)。岡安氏が全体照明計画を担当した(写真:柳生 貴也)



M&Oデザイン事務所代表、Light Bridge Association JAPAN NPO理事長の落合勉氏(写真:M&Oデザイン事務所)

10月29日(木) 13:00~13:40

「照明デザインの新しい手法と留意点」

落合 勉 氏(照明デザイナー、M&Oデザイン事務所代表、Light Bridge Association JAPAN NPO理事長)

[講演内容]

 照明デザイナーの落合勉氏は、2001年からLED照明に特化し、専業として活動を展開し、2002年には世界初のLED照明展示会を開催。06年にはLED照明を本格的に採用した実験住宅(千葉県流山市)をいち早く実現している(エアサイクル産業、コイズミ照明、スタンレー電気と共同)。08年には、トヨタすまいるライフが開発する環境共生型の分譲住宅「Green Avenue あざぶの丘」(愛知県三好町)において、日本初となるオールLEDによる外構照明計画を実践し、合わせてオールLEDのモデル住宅づくりにかかわっている(あざぶの街akaliデザインチームとしての取り組み)。

 そのほか、有機ELを含めた新光源の普及と、新しい器具デザインを開発することの重要性を啓もうする活動にも力を傾け、09年には非営利団体のLight Bridge Association JAPAN NPO(あかりの架け橋)を設立。海外事情にも精通しており、そうした数々の経験をもとに、講演では、照明デザインの新しい手法と、新光源を採用する際の留意点を解説する。

落合 勉
照明デザイナー、M&Oデザイン事務所代表、Light Bridge Association JAPAN NPO理事長
1948年愛知県生まれ。70年武蔵野美術大学・短大部デザイン専攻科修了。72年ヤマギワ入社、LDヤマギワ研究所で照明に関する企画・デザイン・制作に従事。82年独立、91年現事務所設立。近年はLED、有機EL照明の普及・啓もうに努め、09年「Light Bridge Association JAPAN NPO」設立、同理事長。


オールLEDによる外構照明計画を実践した環境共生型の分譲住宅「Green Avenue あざぶの丘」(写真:M&Oデザイン事務所)
オールLEDによる外構照明計画を実践した環境共生型の分譲住宅「Green Avenue あざぶの丘」(写真:M&Oデザイン事務所)



日建設計 設備設計部門 設備設計室長 滝澤総氏(写真:ケンプラッツ)

10月30日(金) 13:00~13:40

「環境配慮建築と照明計画の未来」

滝澤 総 氏(日建設計 設備設計部門 設備設計室長)

[講演内容]

 日建設計で設備設計を手掛ける滝澤総氏は、東京ガスアースポート(1996年)、エプソンイノベーションセンター(2006年)など、環境配慮型の建築として高い評価を受けている大規模プロジェクトに携わり、設備設計分野の第一線で活躍している。設備設計者の立場から見た環境配慮建築を「バランスのよい建築であること、環境配慮のために未来のあるべき姿から考えることが大切だ」と言う。

 LED照明の採用については、「意匠設計者や発注者からの要望が強い。技術開発のスピードが速いため、建築が完成した時に陳腐化しないよう、慎重に取り組んでいる」と滝沢氏は言う。講演では、環境配慮建築の実例のほか、自社内での照明製品比較や組織としての情報共有の様子について語る。

滝澤 総
日建設計 設備設計部門 設備設計室長
1964年生まれ。1989年早稲田大学大学院理工学研究科電気工学専攻を修了後、日建設計に入社。2009年1月より現職。オフィス建築を多く手掛けるほか、電気設備学会地球環境委員会委員長、空気調和衛生工学会地球環境委員会委員、照明学会「照明合理化の指針」改定委員会委員、公共建築協会次世代公共建築研究会幹事などを務める。エプソンイノベーションセンターが電気設備学会賞、サステナブル建築賞を受賞するなど環境関連の受賞も多数。


エプソンイノベーションセンター(長野県塩尻市)。A棟(開発棟)のアトリウム内部(写真:細谷 陽二郎)
エプソンイノベーションセンター(長野県塩尻市)。A棟(開発棟)のアトリウム内部(写真:細谷 陽二郎)

 なお、メーンシアターでは、上記以外にも照明関連の講演を行う。詳細はタイムテーブルを参照いただきたい。

開催概要

● 会期:2009年10月28日(水)~30日(金) 10:00~17:00
● 会場:パシフィコ横浜
● 主催:日経BP社
● 後援:経済産業省/横浜市
● 協賛:LED照明推進協議会/日本半導体製造装置協会(SEAJ)/日本化学会/日本真空工業会/日本貿易振興機構(ジェトロ)
● 協力:日本経済新聞社
● 入場料:2,000円(消費税込) ※事前登録していただくと無料になります。
● 同時開催:FPD International 2009

<追加情報>滝澤総氏のプロフィルを追加しました(2009年10月26日15時10分)