東武タワースカイツリーは10月16日、同社と東武鉄道が東京都墨田区業平橋・押上地区で建設している東京スカイツリーの照明計画を発表した。計画の基本コンセプトである「地域性」「歴史性」「環境時代にふさわしい象徴性」を踏まえた2種類のパターンを用意し、1日ごとに交互にタワーを照らす。担当したのは、シリウスライティングオフィス代表の戸恒浩人氏だ。


(1)心意気を表現した「粋」
「粋」のパターンで照らした東京スカイツリーの完成予想図。大地から力強く立ち上がるイメージで計画した。淡い青色でタワーの心柱を照らす。2つの展望台の上部では、一定の速さの光がタワーの周囲を回る (資料:東武タワースカイツリー、東武鉄道)
(2)美意識を表現した「雅」
「雅」のパターンの完成予想図。鉄骨の構造体を衣に見立て、優雅さや気品を表現した。鉄骨の交点にも照明を配する。アクセントカラーは「江戸紫」だ。「粋」のパターンと同様に、展望台の上部に回転する光を配した (資料:東武タワースカイツリー、東武鉄道)


 2種類の照明パターンはそれぞれ、(1)日本人の心意気を表現した「粋(いき)」と、(2)美意識を表現した「雅(みやび)」、と名付けた。「先人や未来を担う世代が見ても心に響くデザインを目指した」と戸恒氏は語る。タワーの上部からは、「東京から見た富士山」をイメージし、下部に向かってグラデーションを描くように光を当てる。徐々に地面に溶け込んでいくような効果を持たせるためだ。また、鉄骨を照らす光でタワーの「そり」と「むくり」を際立たせる。

 省エネルギーと美しさが両立するデザインもテーマだった。戸恒氏は「陰影礼賛(らいさん)」という言葉を引き合いに出し、「全体を照らさなくても、照らす部分と陰になる部分が一体となって美しく感じられるようにした」と説明する。ハード面では、LED照明器具などの長寿命で高効率な光源を採用する方針だ。照明設備の基本計画と実施設計は日建設計が手掛ける。

 東京スカイツリーの高さは634mで、完成時には自立式電波塔として世界最高の高さになる見込み。地上350mに第1展望台、同450mに第2展望台を配置する。2008年7月に着工しており、12年春に開業する見通し。設計者は日建設計、施工者は大林組だ。


左は東京スカイツリーの照明計画を担当した戸恒浩人氏。右が東武タワースカイツリーの宮杉欣也社長。戸恒氏はこれまでに、浜離宮恩賜庭園のライトアップや、日本経済新聞社東京本社ビルの照明などを手掛けた (写真:日経アーキテクチュア)