今回のLED電球
今回のLED電球
COB構造のパッケージの製造工程(ワイヤー・ボンディングを実施しているところ)
COB構造のパッケージの製造工程(ワイヤー・ボンディングを実施しているところ)

 東芝ライテックが2009年9月30日に発表したLED電球「一般電球形8.7W」は、60W形白熱電球に相当する製品であり、昼白色品で全光束810lm、発光効率で93lm/Wを実現した(関連記事)。このために数十mWクラスの小型LEDを100数十個並べて実装するCOB(chip on board)構造の大型パッケージを採用した。

 今回のLED電球を開発するに当たって東芝ライテックは「全光束で白熱電球と同等にすることを目指した」(同社LED部LED企画部商品企画担当主務の佐野浩氏)。これまでのLED電球は、例えば60W形白熱電球相当と各社が発表している製品でも、その意味は“電球直下の明るさが60W形白熱電球と同程度”という意味であり、電球が発するすべての光の量である全光束では劣っていた。今回は、この全光束で白色電球並みを目指したため、全光束を同社従来品の 1.4~1.5倍に当たる810lmまで高める必要があった。

 この全光束を達成するためにCOB構造を今回新たに採用した。同社従来のLED電球は1Wクラスの大型LEDを数個、それそれ別々のパッケージに封止した形でLED電球の中に組み込んでいた。しかし、この構造のままで今回目標とした全光束を達成しようとすると、搭載個数が増えて「LED電球内にギリギリ」(同氏)搭載できるかどうかという実装面積が必要になってしまう。さらに、放熱面でも簡単ではなかった。このため、実装面積や放熱性で有利な COB構造を採用した。

 今回の構造では、まずパッケージ基板となる15mm角の基板の上に100数十個のLEDチップを敷き詰める。この際、LEDチップの大きさや個数、配置間隔などは、熱に関するシミュレーションを実施して最適化し、その上で全体がなるべく正方形に近い形になるように配置した。敷き詰めたチップにワイヤー・ボンディングを施し、蛍光体を塗布した後、パッケージに封止する。こうしてCOB構造のパッケージに仕上げた。

大型の平面パッケージは主流になるか

 大型かつ平面型の白色LEDパッケージをLED電球に1個搭載したのは、今回の東芝ライテックのほか、2009年9月10日に製品発表したパナソニックも同様の手法を採っている(Tech-On!関連記事)。これまでのLED電球は、5mm角程度で投入電力1Wクラスの白色LEDパッケージをランプに4~6個を実装することが多かったので、大型LEDを1個搭載というのは潮流になりつつあるといえそうだ。

 大型の白色LEDパッケージの利点は、パッケージの放熱面積を広く取れることである。白色LEDパッケージから熱を筐体へ逃がしやすく、点灯時のパッケージ内の青色LEDチップの温度上昇をできる限り抑えられるので、発光効率を高い状態に保てるわけだ。それに対して、LED照明では1Wクラスの白色LEDパッケージを多数実装する方がデザインの自由度が高いとして照明器具メーカーの好まれる傾向がある。さまざまな形状のLED照明を設計しようとすると、LEDパッケージは小型である方がデザイン上の制約が少ないとされるからだ。

 ただ、あるLED関係者によれば、 1Wクラスを複数個用いることによるこのようなデザイン面の自由度の利点は、LED電球についてはあまり当てはまらないという。LED電球を装着する口金は既存光源と同じであるために決まっており、かつLED電球そのものの形状に多少の差があれ「白熱電球に近い」ことには変わらないからだ。つまり、LED 照明器具としてのデザインの自由度は高いとはいえない。

 デザイン面の自由度がなくなると、エネルギー効率面から大型の白色LEDパッケージの方がLED照明に有利になる。前述の放熱面の利点に加え、光損失を少なくできることから大型の白色LEDパッケージを使う方が向いているという意見がある。大型白色LEDパッケージの方が面光源に近く、LED照明にありがちな“ぎらつき(グレア)”が少ないとされるからだ。一般的に、LED照明ではグレアを抑えるために光を拡散させるためのカバーを取り付ける。ただし、グレアが抑えられる一方で光の損失が生じている。あるLED関係者によれば、大型白色LEDパッケージを用いるとグレアが少ない分、光の透過率が高いカバーを使えるので、LEDそのものから筐体外に取り出せる光の量が増えてランプ全体での発光効率が向上するという。