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保存(2) 豊郷小、住民運動で転生成るも続く対立

2009/08/26

 米国人建築家ウイリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964年)が設計し、1937年に竣工した滋賀県の豊郷町立豊郷小学校。その保存活動は、住民団体「豊郷小学校の歴史と未来を考える会」(以下、考える会)が中心となって担ってきた。

改修が完了し、2009年4月に町立図書館や子育て支援センターなどコミュニティー施設として開館した、豊郷小旧校舎(写真:車田 保)

 1999年に大野和三郎・前町長が当選すると、校舎の建て替え計画が具体化し始めた。危機感を募らせた住民は、2001年10月に考える会を結成し、シンポジウムの開催や訴訟を通して保存を訴えてきた。

 住民の粘り強い運動によって、町は02年12月、建て替えから、新校舎を敷地内に建設する方針に転換したものの、元の校舎の利用については手つかずの時期が続いた。具体的に動き出したのは、05年5月、大野町長が「まちづくりプロジェクト委員会」を組織して以降だ。

豊郷小の改修前の外観。校舎として利用されなくなってから改修計画がまとまるまで5年を要した(写真:一粒社ヴォーリズ建築事務所)

 新校舎の建設資金支払い差し止めを求める訴訟などは、07年4月までに住民側の勝訴が確定。同年12月には新校舎の建設費の損害賠償請求訴訟が和解し、一連の住民訴訟が終結した。和解の条件として、旧校舎を教育・福祉の関連施設として活用することなどが盛り込まれた。

豊郷小学校の旧校舎と、その東側に2004年に竣工した新校舎。新校舎への建設費支出差し止めなどを巡る訴訟は住民側が勝訴した(写真:車田 保)

 現町長の伊藤定勉氏は、考える会の会員も含めた新メンバーによるまちづくりプロジェクト委員会に諮問し、08年5月に利用計画案をまとめた。豊郷町総務企画課で旧校舎の活用を担当する山田裕樹氏は、「和解勧告と、まちづくりプロジェクト委員会を通して保存の方向性が絞り込めた」と振り返る。

 その成果は、大野町長の下でいったんまとめられた計画案と比べるとよく分かる。同案では、2階の半分は改修した上で冷暖房設備を入れて貸し会議室として利用、前庭にグラウンドゴルフコースを設けるなどとしていた。住民の運動によってクリアすべきハードルが上がり、往時の雰囲気を尊重する現在の保存につながったと言えるだろう。

樋口 智幸日経アーキテクチュア

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